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Re: すいぶ!-南梨高等学校吹奏楽部- ( No.92 )
日時: 2011/05/30 17:09
名前: 夕詠 ◆NowzvQPzTI (ID: aaVwXSZP)
参照: http://www.youtube.com/watch?v

【harmony.16*となりのかけるくん!】



「ホントに死ぬ……ていうか死にたい」

いつものように背中に弦バスを背負い、階段をおぼつかない足取りで下っていく。
そんな中、私———芦沢由里子は虚空を見つめ呟いた。

「だから俺が持ちましょうかっていってるじゃないですか」

すると前をチューバを抱えて歩いていた翔くんが振り向いた。
私が弱音を吐くと翔くんは必ずと言っていいほど、この台詞を言う。
今だって五メートルは離れてるのに……どんだけ耳いいのよ。

「いい!一人で持てるもん!」

ついムキになっていつも通りの返答をしてしまった。
言った後で少し後悔する。
最近思う。
翔くんは私の事をどう思ってるんだろう。
だって、いつもこんな感じで返しちゃうし、素直じゃないし、可愛くないし……。
内心イライラしてたりするのかな……?

———……って、

「何で私、こんなこと……っ!?」

何故か顔が熱くなる。
すると翔くんは再び振り返って、

「由里子先輩、どうかしました?」

由里子“先輩”。
この先輩という単語が何度邪魔だと思ったか。
あと一年遅く生まれてたら、もっと一緒に———。

なんて、

「……か、翔くんのバカっ!!」

馬鹿みたい。

「馬鹿ってなんですか、馬鹿って」

私の言葉に翔くんはむくれた。
いくら温和な方の翔くんでも、さすがに怒ったかな?
私は翔くんの元に駆け寄った。

「ご、ごめん」

そう一言だけ言って、また階段を下りた。
お、重い……。
おぼつかない足取り。
すると後ろから翔くんが、

「別に気にしてないですから」

と爽やかな笑顔を浮かべながら私の隣を歩く。
ふらふらしながら歩いているため私のスピードは遅いのだが、翔くんはペースを合わせて一緒に歩いてくれている。
私の事なんか気にしないでもっと早く歩けばいいのに。
そう思って背の高い翔くんを見上げると、それに気づいた翔くんは私に微笑む。
もう、なんなのよ。

「いちいちドキドキさせんな、馬鹿ーっ!!」

私の言葉に翔くんは「すみませんね」と私の頭に手を置いた。
———やっぱり、翔くんはずるい。