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Enjoy Club 2章 第2話『灰に染まる波』(5) ( No.134 )
日時: 2011/10/06 20:44
名前: 友桃 ◆NsLg9LxcnY (ID: AEu.ecsA)
参照: テンポの悪さが酷いです; *2ページ


 じゅ〜と香ばしい音を立てるフライパン。ところどころ白くなった鶏肉を、木べらで小刻みに転がしていく。その手をいったんとめて、水希がそこに小皿の中身をあけた。熱いフライパンにあてられ激しく音を立てるのは、玉ねぎのみじん切り。薄く湯気が立ちあがり、玉ねぎ独特のつんとしたにおいに水希が少し顔をしかめている。ぱちぱちと弾けるような音とともに、玉ねぎの色がだんだんと透き通ってくる……。
 恵玲はそこでふと我に返った。手際良く材料を炒めていく水希の手元を、いつしか真剣に見つめていたのだ。恵玲は止まっていた手を慌てて動かし、4人分のご飯とケチャップを調理台においていく。そしてすぐに塩・コショウを取ろうと棚に向かった恵玲の背中に、水希が一言「ありがとう」と声をかけてきた。ちょうど背伸びをして塩の小瓶を手に取っていた恵玲が軽く後ろを振り返ると、エプロン姿の水希がこちらを見ている。その曇りひとつない澄んだ瞳を見て、恵玲はにっこりと微笑んだ。

 もうすぐ時計の針は夜の7時を指す。恵玲のお腹もちょうど空腹を訴える頃だ。でも、今夜のメニューと水希の手際の良さからして、夜ごはんもそう待たずに食べられそうだった。今この場所——ウィルと白波の家には、家主がどちらもいない。白波はいつものことだが、ウィルは今サラダの材料を調達しに行っている。家を出たのが30分ほど前なので、そろそろ帰ってくる頃だ。

 次は何をしようかと辺りを見回した恵玲は、再び水希のところで視線をとめた。ふと先刻の水希の気遣いを思い出して自然と口元がほころぶ。恵玲は今日学校で体育祭の練習があり、それなりに疲れて帰ってきた。それを見た水希が、今日は自分が夜ごはんを作ると申し出てくれたのである。基本的にいつもは手分けをしてご飯を作っているのだが、今日はお言葉に甘えて補助に回ることにしたのだ。ちなみに水希が材料を切っている最中仮眠をとったので、今はもうほとんど疲れはとれている。