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コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Enjoy Club 2章第4話『知る者、知らぬ者』(11) ( No.328 )
- 日時: 2013/09/21 22:05
- 名前: 友桃 ◆NsLg9LxcnY (ID: KZXdVVzS)
- 参照: 1ページ目
「——なにが“根っからの不良”だ」
風也は呆れ顔でそう呟いた。冷たい視線の先には、薄目である一点を見つめている後藤の姿がある。顎まで薄皮一枚のところで寸止めされた風也の足を、彼はひきつった顔で凝視していた。その顔から一度沸騰した怒りが急速に冷却されるの見て風也があっさりと足を引くと、彼は苦虫をかみつぶしたような顔でこちらを見る。同時に、静まり返っていた聴衆からどよめきが起き、やや安堵したような空気が一帯に流れた。
羞恥と怒りにこぶしを震わせている後藤に、風也はどこか冷めた目を向けて言った。
「お前も下橋に来た理由はオレとたいして変わんねぇだろ。ほんと何が“根っからの不良”だよ」
乾いた笑いを漏らして、ふと風也は後藤から視線をそらす。そのまますぐ後ろの2階建ての建物の壁に背を預けると、小さく息を吐いて額ににじんだ汗を軽くぬぐった。ここは背の低い建物がずらりと並んでいる場所なので、どうしても熱い日差しが差し込んでくる。ちょうど風也と後藤が立っている場所も、アスファルトの地面が白く照らされていた。よくこんな暑いところにたむろっていられるな、とそこだけは感心しながら後藤に視線を戻すと、彼は汗をふくのも忘れ顔を真っ赤にしてこちらを睨みつけていた。今にも歯ぎしりまで聞こえてきそうである。人より体格が大きくケンカも強い後藤が、風也のような細身の青年に手も足も出ないこの状況は、部下達から見たらさぞ目を疑う光景のはずだった。
——後藤が下橋に来た理由。それを、風也は具体的に知っていたわけではない。しかし、下橋に入るために初めて後藤と“お目見え”したとき、彼はそれをにおわせることを言っていた。初めて下橋に来た日。その日のことが、自然と脳裏に浮かんできた。
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