コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Enjoy Club 2章 第1話『愛しき日常』(4) ( No.59 )
- 日時: 2011/08/01 23:17
- 名前: 友桃 ◆NsLg9LxcnY (ID: AEu.ecsA)
- 参照: 書けない>< 2ページです
その日、1時間目終了後の休み時間。私のクラス——4組も、他のクラス同様体育祭の話し合いの余韻が未だ教室内を満たしていた。ざわつきで授業と休み時間との区切りがあいまいになる中、私もごたぶんに漏れず、恵玲らいつものメンバーと出場種目の話題で盛り上がっていた。いつものメンバーとはもちろん恵玲、津波、美久、静音、そして私——友賀亜弓の5人である。ちなみに先程の話し合いで、私は男女混合リレーに、恵玲は障害物競争に出場することになっていた。これでも私は走ることにかけてはいささか自信があるのだ。言うまでもなく、恵玲には敵わないが。
私達は今、恵玲と美久の机を囲み、それぞれ思い思いの位置に落ち着いている。私は恵玲の席が窓際であるのをいいことに、窓の銀色の柵にもたれて涼しい風を背中に浴びていた。まだ夏真っ盛りの9月。服装も夏仕様なので、ブラウス1枚で過ごすことを許されている。たいていの女子は長袖のブラウスを七分まで折って、暑い暑いと言いながら手で顔をあおいでいる。半袖のものを持っているにもかかわらず、だ。きっと他の人からすれば突込みどころ満載の光景なのだろう。そして私も、我慢して長袖を着るいち女子高生である。しかし今日は、比較的外の空気がさわやかで過ごしやすい日だった。まぁ暑いことには変わりないが。
ふとそこで熱い視線を感じ、私は正面にいる美久に目を向けちょっと首をかしげて見せた。美久は柔らかい目つきでこちらをみたまま、「いいなぁ」と鈴の音のような声で呟いた。
「リレーとか出れる人すごいなぁ、尊敬するなぁ」
私が言葉を返すよりも前に、津波が口を挟む。
「パン食い競争も結構くせ者なんだからね、美久」
彼女のその台詞はそうとう予想外なものだったらしい。美久がハッとして津波を見、ひどくショックを受けた顔で彼女にしては切羽詰まった声を発した。
「も、もしかして難しいの……!? あたしパン食い競争ってやったことなくって」
「だって難しそうじゃない? 手使っちゃダメなんだよ? こうさ、宙に浮いてるやつを手を使わずにパクッてやるんだよ、パクッて」
言いながらパンにかぶりつく動作をやってみせる津波を、美久はぽかんと口を開けて食い入るように見つめている。そのうち彼女の雪のように白く繊細な顔がどんどん青ざめていくのを見て、津波は突然吹き出した。横で見ていた私達3人が、フォローを入れようと慌てて腰をあげるのとほぼ同時だった。
「ごめん美久、冗談! あ、いやさっきやって見せたのは冗談じゃないけど、そんな心配するほど難しくないよ、たぶん!」
たぶんをつけるあたりちゃっかりしている。
津波の冗談に振り回されて子犬のように濡れた目を白黒させる美久。その様子を見ながら私達は顔を見合わせて、穏やかな笑い声をあげた。