コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 突然男の子になっちゃったりしちゃったわけで。 ( No.4 )
- 日時: 2011/05/21 12:41
- 名前: ののか (ID: .8sHsKzk)
第3話 「まじですか、まじですか……!?」
「加藤浩す——」
「遅れましたっっ!」
教室のドアを勢いよく開けた。
どうやら、出欠をとっているところだったようだ。いやー危ない、危ない。あと少し遅かったら遅刻になるところだったよ。
しかし、クラスメイトの視線が一斉に私達へと向けられ、ちょっと恥ずかしい。「すいません……」と腰を低くしながら、私と水嶋はいそいそと自分の席へ座った。
「木津川優。遅刻にしてやろうと思ったが……。仕方ない、今回だけ見逃してやる。以後、気をつけろよ」
「ありがとうございますっ」
相変わらずゴリケンは優しい、太っ腹だね。
五里田健一(ごりた けんいち)。通称ゴリケン。その巨大な身体からは、体育教師を思わさせられるが実は国語の教師だったりする。
どうやら、私のここでの名前は「木津川優」というらしい。やっぱりここは、私が男だった世界なんだ……。
他の皆も特に変わって無いし……。なんか不思議な感じだ。
後ろの席を見ようと振り向いたら、同じパートの小野美鈴(おの みすず)がいた。ちなみに私は吹奏楽部所属で、トランペットをやっている。みっちゃん——美鈴とは、同じパートなだけあってかなり仲がいい……と思う。
——あ、目が合った。
「お、おはよう……」
「おはよ」
目が合ってしまったので、思わず挨拶したが、いつも通りのようだ。
でもどこか態度が冷たくなっていたように感じて、ちょっと寂しくなった。
*
4時間目の授業が終わって、ついに給食。
ここまで、特に問題もなく過ごしていけた。これも全部、水嶋のおかげだ。
私は「この世界の私」を知らない。だから、他人とどう接していいのか分からなくてめっちゃ考えていたけど、水嶋が色々教えてくれたりフォローしてくれた。
これもあれも、全部水嶋のおかげだ。ありがとう、水嶋。
しかし、水嶋と話すといつも緊張しちゃうんだけど、どうすればいいのだろうか? 周りからしてみれば、ただのホモだよねー……。あーどうしよう……。
「木津川ー!」
「はいっ!?」
急に声かけんなよ、びっくりしたじゃないか!
私を驚かせた犯人はクラスメイトの超ハイテンション☆ボーイの芦沢でした。
地味そうに見えて、意外と水嶋と仲いいからチェック済みである。てか、同じ部活。ちなみに私は芦沢のことを、「亮介」と呼んでいる……らしい。つまり私も芦沢と仲がいい……らしい。
「どうしたー? 大丈夫かよー?」
「お、おう! ちょっとぼーとしてただけだよ」
「それならいいけどよっ」
ゴソゴソ、とジャージのポケットから紙を取り出した芦沢。手紙のようにも見える。
「これ。なんか今日渡されたんだけど、後輩からお前にって」
それは、几帳面に折られた一通の手紙。表には、「木津川先輩へ」と、ピンクのなんとも可愛い字で隅っこのほうに書かれていた。
……ちょ、まさか、これ、
「この裏切りもの!」
と、泣きながら芦沢は給食を取りに行ってしまった。その気持ちは分からなくも無いけど、相変わらずのテンションだなぁ……。
——ちょ、ちょっと、え、まじで? 嘘、嘘だよね?
まだ混乱している頭で、手紙を乱暴に開く。
そこには、さっきの可愛い文字で「今日の昼休み裏校舎で待ってます」と一言だけ添えられていた。
——なにこの告白フラグ。
いつの間にか私はもてるようになったのだろうか。
ていうか、今の時代は普通メールで告くるのではないだろうか。
それはさておき、言っとくけど今まで生きていて14年間、一度も告白されたことがない。……そのファースト・告白がまさかの女の子とは……。
い、いや、まだ分からないぞ! 嘘告かもしれない!
きっと嘘告だ! 嘘に違いない! 私が告白されるなんてありえないんだから!
だから、私は行かない。昼休みは水嶋と一緒に中庭でバスケをするんだ——!
*
「いや、行けよ」
「なっなんで!?」
「普通行くだろ。そっか、お前ヘタレだもんな」
「うっさいよ!」
そんな事実をはっきり言うなよ!
こんなこと言えるの、水嶋しかいないのでただいま相談中 in男子トイレ。
女子トイレでは話すわけにはいかないので、もちろん男子トイレで。
……男子トイレとかなんか緊張するな……もちろん、便器には背を向けて話してます。
「とりあえず、行って来い」
「……はい」
なんか、好きな人に言われるのって複雑だなぁ……。
というわけで、私は裏校舎に行くことになりました。
