コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 突然男の子になっちゃったりしちゃったわけで。 ( No.8 )
- 日時: 2011/05/19 18:11
- 名前: ののか (ID: .8sHsKzk)
第4話 「男は辛いよ、」
この学校の裏校舎といえば、告白の名所アーンド、恋人がチョメチョメするところで有名だけど、時折ふざけ半分でこそこそと裏校舎に入る輩もいるから、最近はめっきりそういう事する人達は、減ってきた。事実、私も一年のとき見にいったことがある。その時は誰もいなかったけど。
裏校舎というものは、なんとも薄気味悪い場所で……実は裏校舎は立ち入り禁止なんだよね……。こういう場所に女の子一人待たせるのも悪いので、急ぐことにした。……って元女のくせに何言ってるんだろうね。
告白する場所、というものは全校生徒暗黙のルールで決められている。
ずっと奥に進んでいくと、ぽっかり空いたスペースがあるのだ。そこが、告白する場所。
居なかったらどうしよう、ドッキリだったらどうしよう……。心臓の音がうるさい。
「木津川先輩……っ」
小さなか細い声で名前を呼ばれた。
私の目の前には女の子がいて、顔を真っ赤にして俯いている。きっとその子が、手紙を書いてくれた子だろう。
……て、めっちゃガチじゃないですか……。告白の空気って、こういう空気なんだ。
「あ、あのっ」
「ん?」
女の子は中々もう一歩踏み出せないみたいで、ずっと言葉を詰まらせている。でも私は笑顔で、優しく、待ってあげるんだ。
こんな緊張しているんだもん、愛想悪くしたら可哀想。
あーなんか私まで緊張してきたし……!
「先輩、好きです! 私と、付き合ってください!」
——うわ、告白って、こんなに、
やばいやばい、なんか私まで顔が熱い。燃えてしまうんじゃないかと思うぐらいに、熱い。
初めて、だからかな、息をするのがとても苦しい。
私はもちろん断る気でいた。
だけど、私が断ったときのこの子の顔を思い浮かべると心がチク、と針で刺されたように痛い、痛い。
こんなに、こんなに、私の目を真っ直ぐ見て、一生懸命はなしてくれているのに。
「先輩……?」
はっと我に返る。
いけない、いけない。考えすぎて、逆に心配させちゃったみたいだ。
……どうすれば、この子も私も幸せなのだろうか。
振られるほうも、振るほうも、辛いんだ。
ぐっと唾を飲み込む。私が、考えた答えは——。
「…………ごめん」
「っ……」
可能な限り頭を下げて、謝った。
その子の声を押し殺す音が聞こえてきて、こっちまで泣きそうになる。
「で、ですよね、ごめんなさい、」
そう言って、立ち去ろうとするその子の腕を掴んだ。
しっかりと見たその子の大きな瞳は、いつか砕けてしまうんじゃないかと思うぐらい涙で歪んでいた。
「待って」
「っ、な、なんですかっ……?」
「友達になろう」
へ、とその子のきょとんとした顔。
「俺、まだ君のことまだよく分かんないし、お互い、ほぼ初対面でしょ? 俺、もっと君のことが知りたいんだ」
——だから、友達になろう。
所謂「友達から始めてください」というやつだ。
これが、一番私もあの子も、傷つかないと思ったから。
さっきまで暗かったあの子の顔は、一気に明るくなった。
「わ、私でよければっ……!」
相変わらず、顔を真っ赤にして伏せるのは変わらないけど、バイバイって手を振ったらさようならって手を振り返してくれた。
その時、丁度昼休みが終わるチャイムの音が聞こえたので、私は教室に戻ることにした。
*
「なに? 振ったの?」
授業中、昼休みのことを一部始終水嶋に話したら、水嶋は納得いかなそうに顔をしかめた。
「振ったんじゃないよ? 友達になろうっていった……」
「友達になろう? 何だそりゃ。超曖昧だな」
「曖昧」ぐさっと私の心に突き刺さった。
社会の教師の大きい声とチョークを黒板に叩く音が、静かな教室に響き渡る。私と話しながらも、水嶋はちゃんとノートをとっていた。さすが水嶋。私もノートとらないとっ……。
「振るなら振れよ」
「でも、可哀想じゃない? あんな、勇気を振り絞って告白してくれたのに……」
「じゃお前、いつかその子と付き合うのかよ」
……付き合わない。
「付き合わねぇんだろ? そんな叶いもしない恋をずるずると引きずらさせられて、そっちの方が可哀想だ。なら、きっぱりと断って、その子が他の奴とくっついた方がよっぽどいいと思う。……無駄な期待、させんなよ」
目の前が真っ暗になった。
確かに、水嶋の言うとおりだ……。私はその子にとってとても残酷なことをしてしまったんだ。私がしたことは、ただの同情だ。
でも、私はその子と本当に友達になりたかった。これっていけないことなのだろうか?
「ま、人それぞれだからな。あんま気にす「え!? 木津川、こくられたの!?」
うっせーよ、高橋! そんな大きな声でいうなよ、馬鹿女!
ほらほら、皆こっちのほう見てるじゃないか!
水嶋が何言ったのか聞こえなかったし……! 相変わらず、こいつはうるさい女だな!
今までいい雰囲気に保たれていた空気は一気に崩れ、ざわざわと騒ぎ始めてきた。
先生が大声で叫んでも聞かない。おまけに、他の人達も私に色々聞いてくるように。
水嶋に助けを求めると、どんまいという顔で見られた。
「なになに、誰に?」
「うるさい!」
あー……最悪だー……。
この時間、私はずっと机に寝そべっていた。
