コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 恋時計 +半実話+ ( No.239 )
- 日時: 2011/08/06 18:28
- 名前: 苺羅、 ◆m.d8wDkh16 (ID: xe6C3PN0)
- 参照: 文字数オーバーしたの初めてだΣ
第160話
なんでこんな、苦しいの。
なんでこんな、好きになったんだろう。
最初は、正直いってそこまですきってわけでもなかった。
とりあえず、誰かに恋したかったんだと思う。
でも、いつのまにか大好きになってた。
自分でも、不思議。
優志のときは、好きだったけど、正直ムカつくこともあった。
足が速いことを自慢したり、そういうときは、好きだったけど、本気でイラッときた。
もちろん、付き合いたい願望があった。
でも……優志のために、身を投げ出せるか、といったら。
もしそんなことになったら。
多分、私はできなかったとおもう。
もちろん、すきだったけど……けど。
今の私は、孝文に対して身を投げ出せるかといったら。
命をかけれるかと問われたら。
私は「yes」と答えてしまうとおもう。
愛しい、あの人が好き、愛してる。
……こんなこと、大人の世界やドラマでしか、聞いたこともみたこともなかったけど。
でも、私は本当に愛してる。
こんなこと、口に出してなんていえないけど……。
好きな人から愛される幸せ。
好きな人がそばにいてくれる幸せ。
それを、優志や美里奈や怜緒や愛可、同じクラスのあいつや、あいつだって……。
14・5歳ですでに、それを経験しているんだ。
羨ましい。
心の底からそう思った。
「かーおり? おい、香織」
「……っ、ごめんごめん、考え事してたぁ」
休憩時間、私は部室の隅に座って、水筒を片手に休憩中だった。
「あのさぁ……どうしよ、皆パート練習一通り終わっちゃった系なんだよねぇ」
「え……」
「キーボードもそうでしょ?」
確かに、軽音楽部に代々受け継がれる、初心者向け基礎メニュー一覧のことは一通りやった。
……もう、あと15分くらいで完全下校の時間だ。
「今日はもういいとしてさ、明日だよ、明日」
「え?」
絵磨は、眉をひそめた。
「……バンドごとの練習になっちゃうかな、的な」
「うげっ」
私は思わず、変な声を出してしまった。
4月にバンドはもう、みんな組んであるし……。
「後輩ははりきるんじゃない、今までバンド練習なんてないに等しかったし」
「……ま、まぁ確かに、そうだけど」
そうだけど……。
バンドでセッションするときの位置は、絵磨・龍夜・康義・辰雅が前にでてきて。
……バックは、うちと孝文とゆうね……。
だって、キーボードとドラムが前にでるって、あんまないし。
だから必然的に、動き回れるギターとベースが、前にでてくることになってしまうのだ。
「ど、どうしよ! 隣だし、隣」
「……ま、まぁ落ち着いて。うちもなんとか部長として、色々がんばってみるけどさぁ」
「う、うん」
私は、焦りつつも、絵磨の目をしっかりみた。
「……いつまでも、バンド練習しないわけにはいかないでしょ?」
「た、たしかに」
確かに、そうだよ。
同じ部活、同じバンドにいるってこと以上、避けれないんだ。
それに私、好きなんじゃないの?
なのに、なんで避けてるの?
「……はやくしないと、盗られちゃうかもよ?」
絵磨のひっそりとした声は、私にとって、どんな言葉よりも鮮明に耳に響いた。
途端に、胸の鼓動が速くなってきた。
孝文の隣には、おなじドラム担当の後輩の女の子がいた。
……んんっ、なんかジェラシー。
「ピンチはチャンスだよ」
「は」
「……だーから、気持ち知られて、そこからはじまることもあんの」
絵磨はそれだけいうと、自分の鞄の場所へ去っていった。
——思った。
みんな、積極的だなって。
好きな人から愛される幸せを知ってる。
それって、すごくいいことなんだ。
でも、時には積極的にいかないと、無理なときもある。
そりゃあ、運よく好きな人から愛されりゃ、幸せだけど。
同じ失敗は繰り返したくないんだ。
私は、優志のほうをちらりとみたあと、水筒を握る手に、さらに力が入った気がした。