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Re:    恋時計  +半実話+ ( No.244 )
日時: 2011/08/10 00:18
名前:   苺羅、 ◆m.d8wDkh16 (ID: xe6C3PN0)
参照:   なんか切ないな、好きやのにー!振り向けこの野朗(何だ


 第161話




 「香織」



 翌日、今日は金曜日。明日からまた休み……なんだけど——
 放課後、私は音楽室の前に立ち尽くしていた。
 呆れ顔で、絵磨がそれをみている。


 「……あはは、はは」
 「あははぢゃねーよ、さっさときな!」


 絵磨は、強引に私の腕を引っ張った。



 「みんなーやっほ」
 「あ、こんにちは!」
 「こんにちはー」



 後輩達は、絵磨に挨拶を返した。
 ついでに私にも挨拶をくれるから、きちんと返す。
 ……よかった、まだ孝文たちはきてないらしい。



 「今、孝文君来てないからホッとしたでしょ」
 「うげっ」
 「……図星だね」


 絵磨は、にやりと笑みを浮かべると、ギターケースを開けた。
 私もキーボードのセッティングに当たる。



 「てかさぁ」


 絵磨が、ギターケースに目を通したまま、口を開いた。
 私は「なぁに?」とまぬけな声で、返す。



 「期末終わったら、孝文君しばらくこないでしょ」
 「え? ……なんで?」


 私は、目を想いっきり丸めた。
 絵磨は私のほうに向くと、「え」というような顔を見せた。



 「ほら、夏休みの大会あるじゃん! あれにむけて、平日も練習が始まるでしょ!」
 「あぁ……そっか、だよね」
 「よって、9年が引退するまで、ほとんどこっち来ないと想うよ。夏休みも野球部練習結構あるし」



 絵磨が話し終えた頃には、すでにマイクまでセッティングしてあった。
 ……今日は6月3日。期末テストまでは、あと20日ぐらいある。
 土日などを省いたら、あと14,5回くらい?
 


 「こんちゃー」




 きた。
 龍夜と孝文と康義と辰雅は、途中であったのか、揃って来た。
 4人は挨拶をすると、何食わぬ顔で、音楽室の隅へ移動し、楽器のセッティングを始めた。



 「みんなーセッティング終えたら、そのまま待機しててねー」



 絵磨がそう叫んだ。
 ……なにするつもりなんだろう。聞こうと想ったけど、そのときのお楽しみ、ということにしておいた。




 みんながセッティングを終え、地べたに座って静まり返る。
 そのとき、絵磨の明るい声がこだましはじめた。




 「えっと……今日は前半は、基礎練のおさらいをやったあと、後半はバンド練習をやってみます!」
 「おー!」
 「よっしゃあ」



 思った通り、後輩たちからは喜びの声があがった。
 平安ズたちも、なんだか嬉しそうな表情を見せた。



 




 ……そして——







 いよいよ、後半の、バンド練習のお時間。
 私は今にも心臓が飛び出しそうで、硬直していた。


 ……ふ、もう、なんか、あれだ。




 無心でいくっきゃないかなぁ。




 「あの、文化祭って今年いつでしたっけ」


 龍夜が、絵磨に尋ねた。
 絵磨は「あっ」という顔をして、音楽室にあったカレンダーをめくりはじめた。
 康義と辰雅も、それに見入る。



 「んーとね……去年が、10月の終わりだったかな? 11月の頭だったかな? そんくらいじゃない?」
 「……そういえば、毎年このくらいのときに、演奏する奴きめてなかったか?」


 その声を聴いた瞬間、心臓が飛び出そうになった。
 孝文の声だった。
 すると、龍夜も康義も辰雅も絵磨も「あぁああ〜」という顔をした。
 私も、同じような顔をして、わざとらしく声を上げて見せた。




 「おい、ちょ、平安!」




 辰雅が、いかにも生意気な口調で、喜んでバンド練習をしようとする、平安ズを呼び止めた。
 平安ズは、眉間にしわを寄せ、一斉にこっちに振り返った。



 「文化祭でるんだったら、こっちきてー」
 「えぇーでるけどぉ、今バンド練習したいのお」


 美里奈が、ギターを片手に不機嫌な声で言った。
 すると康義は、絵磨の方向を向いて、



 「絵磨先輩、この人たち最初で最後の文化祭ライブどうでもいいらしいっすよ」


 と、ポーカーフェイスで言い放った。



 「えぇー!? そうなのぉ? うっそぉ」
 「ライブできるのは、俺らとお前等最初で最後だからってゆって、出してもらえるのになぁ」
 「後輩は、来年もあるから来年でるけどなぁ、あ、俺ら4人も」



 私、龍夜、孝文の順番に口を開いた。
 平安ズたちは顔色をかえ「でるでるぅ〜」と叫びながら、こっちに思いっきり近づいてきた。




 絵磨が、後輩達にバンド練習の要領を説明すると、私達11人は音楽準備室へ移動した。