コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 恋時計 +半実話+ ( No.319 )
- 日時: 2011/10/16 15:15
- 名前: 苺羅、 ◆m.d8wDkh16 (ID: S86U/ykR)
第176話
そして、週があけ月曜日。今日は平安ズたちもやってくる日だ。
それでも私達は、いつもどおり文化祭練習に励んでいた。
9年生の実力テストも終わり、またいつもの日常が戻ってきたのだ。
私は、キーボードと楽譜をにらめっこしていると、音楽室のドアが勢い良く開いた。
案の定、そこには平安ズの5人が仲良く並んで立っていた。
皆は挨拶をすませると、また持ち場に目をやった。
私も、5人に挨拶するとまた、楽譜に目をやる。
しかし、それは優志のデカい声でさえぎられた。
「皆聞けー! 俺たちのオリジナル曲が完成したぞーっ!」
「おおーっ、聴かせて!」
まず、最初に興味を示したのは辰雅だった。
すると5人は、真っ先に楽器をスタンバイし、もう演奏する体制にはいっていた。
「皆、そこらへんに座ってよ」
美里奈もいつものドヤ顔で、皆に告げた。
私達は楽器を置くと、とりあえず平安ズの周りを囲んだ。
やがて、辺りがしーんとすると、優志のスティックカウントが始まった。
そして、戸川の派手なギターリフが始まり、怜緒のベース、愛可のキーボード、そして美里奈のボーカル。
5人とも、春よりかは格段に上達していて、一瞬びっくりさせられた。
「好き好き好きよ、そんなの当たり前よー、フゥッフゥッ」
「……え、なんじゃこりゃ」
いきなり入ってきた美里奈の歌詞に、康義が密かに呟いた。
すると隣の龍夜も、歌詞について意見を入れた。
「絶対、美里奈が作詞してるよな、それか愛可」
「……戸川先輩のギターかっこいいのに」
孝文も、戸川を尊敬の眼差しでみつつ、小声になる。
「あなたーのためーなら、どこまーでもいけるよぉーっ! いぇっ!」
「「フーフーフーフーフーフー!!」」
「!?」
美里奈が、ギターをかき鳴らして飛び跳ねたかとおもうと、突然謎のコーラスが入ってきた。
歌詞とは真逆に、演奏は普通にロックでめっちゃいいのに……。
終始そうおもっていると、演奏は終わりを告げた。
一応拍手があがったが、やはり歌詞に批判の声があがった。
「怜緒、これ作詞作曲誰がしたの?」
すぐそばにいた絵磨が、尋ねた。
「作曲は、数々のロックバンドを参考にみんなでやった。作詞は……女子がやった」
「……やっぱり」
龍夜が、ぼそりとつぶやく。
後輩たちも「歌詞めちゃくちゃ」「変です」と、お構いなしに文句を言い始めた。
でも、ここは美里奈と愛可、ここまで言われて黙ってはいない。
「ちょっとー! 愛可の作詞センスに文句つけるつもりぃ?」
「作詞って意外とむずいんだよ! なんなら、あんたらやってみなさいよ!!」
2人は、頬を膨らませて顔がものすごいことになっていた。
思わず吹きだすが、愛可ににらまれ、私はとっさに目をそらした。
「香織! あんたはどーおもった? この歌」
「……えっと、演奏はめっちゃかっこいいから、この際インストゥルメンタルでいいとおもう」
インストゥルメンタル……音楽やってたら、絶対この単語は多分、しってるとおもう。
そうおもったが、5人はぽかーんとした表情を浮かべた。
「……ボーカルなしで、ってことだよ」
絵磨が助け舟を出すと、5人は「ああ」という顔になった。
しかし、美里奈が再び不機嫌な顔になった。
「結局、歌詞いらないってことじゃん!」
「そーゆーことだよ、おかめと納豆!」
孝文が、突然立ち上がって罵声を浴びせた。
「なっ、あんたはハゲ巨人でしょ、だまらっしゃい」
「だまらっしゃい」
「……チッ、うっぜぇー野朗だな」
美里奈が、舌打ちをすると、険悪な表情に変わった。
「んま、文化祭ライブにお笑いも要ると思うから、まぁいいとおもう、いやでもウケるかな」
「……もういいよ、コピーのやつ練習しようぜ」
優志が眉毛を思いっきり吊り下げて、そういった。
皆もそれぞれ持ち場に戻り、再び音楽室は文化祭練習の音色で、溢れかえっていった。
「ねぇ、香織」
「何?」
「あのさー……」
絵磨は、周りをきょろきょろしながら、何かいいたげだった。
「メール送ってみた?」
「……ううん、まず口実がないんだよ」
「……直接聴けば?」
直接聴けたら、どんなにいいんだろう。
なんか色々考えてしまって、怖い。
「……っ、い、いまは文化祭練習に没頭しよ! ねっ」
「そうだよね、じゃ、ソロの練習してきまーす」
絵磨は、人懐っこい笑顔をうかべて、ギターの場所へ向かった。
私もキーボードに再び目をやった。