コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 恋時計 +半実話+ ( No.322 )
- 日時: 2011/10/30 15:39
- 名前: 苺羅、 ◆m.d8wDkh16 (ID: S86U/ykR)
第179話
翌日、私は登校するとすぐ様、絵磨のところへ駆け寄った。
「絵磨!! 私ね、あの、ああな、ああのあ、ああ」
「……落ち着いて!!」
「あ、えっと……メール、送れましたぁ!!」
私は、そういってブイサインをしてみせると、飛び跳ねた。
絵磨も叫びながら「おめでとぉー!!」といってくれた。
「で? なんてかえってきた? 続いた?」
「なんかねー教えてもらった人の名前ゆったら、それっきり、ぱったりだよー!!」
「まぢで? そうなんだ……」
私たちはいつのまにか、廊下に出て、窓から景色を見ていた。
いつも、こういう話をする場合は、ここにくるって決めている。
別にお互い、言葉に出したわけじゃないけど、なんとなくね。
「しかも、龍夜に知られてるとゆーね……」
「えぇっ!? なんでそりゃ、また……あの2人も、本当に仲いいからねぇー……」
「だよね」
数秒の沈黙が続いたが、絵磨は別の話題を振り始めた。
「あっ、ちなみに今日の部活は、文化祭の事は平安ズたちに任せてうちらはコンクールの練習するから」
「まぢで? なんで?」
私は、目を点にして尋ねた。
絵磨は少しあきれた顔になる。
「なんでって……コンクール、18日だからあと4日しかないんだよ?」
「えっ? そんなに? 早いね」
「先生ももうちょっと早く言ってくれたらよかったんだけどね。まぁ、十八番をやるつもりだけど」
絵磨はそういって、遠い目をして見せた。
その目には、部長としての輝き、そして少し切なさも感じた。
あと1ヵ月後に迫った文化祭ライブ。
この文化祭が終われば、私達は引退となる。
先輩達が培ってきた伝統、それを、後輩に伝える私達。
来年度からの春椿軽音楽部は、どんなふうになるんだろう?
新入部員でもくるのかな?
どちらにしても、新しい軽音楽部となるのは確かだ。
私達がいない、軽音楽部。
そっか、もうあの4人と演奏したり、後輩と一緒にいたりする時間はもう残り少ないんだね。
恋愛、これから待ってる受験、そして軽音楽部。
私の頭の中は、色んなことでごっちゃになりそうだった。
**
放課後の部活の時間、絵磨は予告どおり、コンクールの練習をすることになった。
部屋のいつものスペースで、私はキーボードを組み立てる。
今は、あんまり恋愛の事は考えないようにしておこう。
機会があれば、またメールを送ればいい。
孝文もいつもと同じで、ドラムの椅子に座りながら、楽譜をまじまじとみつめていた。
……よし、今日も演奏がんばろう!!
「よし、じゃあ、ちょっとやってみるか?」
「うん」
孝文は龍夜に、目配せをした。
龍夜は頷くと、ベースを構えた。
リズム隊であり、仲のいい2人はこうして、よくいっしょに練習中もあわせたりしている。
……孝文にとって龍夜は信頼できる存在で、きっと龍夜もそうおもっているんだとおもう。
龍夜にそんな友達ができて、よかった。
安心した、姉として。
孝文、やっぱり、私は、孝文が——
だから、諦めたくない、諦めたくない。
私は1人で強くそう想いながら、目を閉じた。
龍夜の安定した綺麗なベースラインを支える、孝文の力強いドラミング。
何度も聴いている私でも、聞きほれてしまう。
「ねぇ、姉ちゃん、なにボケーッとしてんの」
「ひっ」
康義が辰雅の隣で、ギターを抱えて私を凝視していた。
私は慌てて我に返って、2人をみつめる。
「孝文のドラムと龍夜君のベースにでも、聞きほれてたんじゃないの」
辰雅が、ニヤニヤしながら私を見た。
げっ、するどいぞ、こいつ。
「そんなことより、さっさと練習しろ、ほら、ねっ」
「ちぇっ、おもしろくないな」
私の鼓動は、いつもいじょうに高鳴っていた。
コンクールまで、あと4日。