コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 透明度五十パーセントの非日常。 ( No.12 )
- 日時: 2011/06/04 15:29
- 名前: 風琳 碧羅 ◆bimZ8KrNKc (ID: 2RWcUGdy)
- 参照: けど、少し可愛かったりもする。他人事だから。
四 危険と戦うという裏の事情
そんなこんなで結局、学校に連絡して休みになり、何もする気がなく、かと言って家にいるとまた姉に色々と言われる事があるだろうと思って、ぶらぶら歩いているといつの間にか廃れ切った商店街へと着いていた。
人っ子ひとりいない。閑散としている其処は、最早誰も利用されなくなった場所に違いない。掃除もされていないのか、ごみがそこかしろに落ちている。
そんな汚いとしか表現のしようのない廃れた商店街の中心を一人歩きながら、のんびりと空を眺めてみた。
嗚呼、綺麗だ。
何故だか知らないがそう思った。
「其処のお姉ちゃん。俺等とちょっといいことしないー?」
こんな声が聞こえてくるまでは。
ゆっくりと後ろを向いてみると、それはまぁ……なんというか……。
兄貴とそっくりな奴が居た訳だ、要約すると。
「お姉ちゃん、俺等と一緒にさ——」
俺等、と言う言葉からも分かるように兄貴とそっくりな奴だけではなく、他にも数人程俺の周りに固まっていた。
所で、俺は断じて「お姉ちゃん」なんかではないんだな。ていうか俺普通に男だぜ。物凄くショックだ、もう言葉に出来ないぐらい。
——俺の事を女の子扱いするのが兄姉だけじゃなかった事に。
「ねぇ、聞いてんの?」
リーダー格らしい兄貴に似た奴がじりじりと滲みよって来る。ちなみに、俺の兄の髪はちょっと茶色がかってるだけだが、コイツはもう明るい茶色に染め上げられている。顔はいいが、見るからに不良のような、そんな俺の一番苦手とするようなタイプの男だった。
じわりじわりと後退させられているのが分かった。そしてじわりじわりと囲まれていくのが分かった。今更だが、弱いな俺。こんな、集団でいなければ強がれない奴ら相手に言葉も出せないとは。怯えている訳ではなく、何故か声が出ない。……嗚呼、俺は。姉や兄の事を悪く言い続けて、それでもあの人達は俺をちゃんと危険から遠ざけてくれてたんだって思い知ったよ、だってなぁ。
「僕の歩に何をしているのかな」
「あたしの歩に手を出さないでくれないかしら」
こんなタイミングで、助けるなんて。絶対俺の後をつけていただろう。危険から俺を遠ざける為に。
二人は周りにいた男を全て一瞬で蹴り倒すと、俺の方へ手を伸ばした。
蹴り飛ばされた男たちは、蹴られた所を庇いながらゆっくりと立ち上がり、俺の姉と兄を眺めた。兄も姉も、そんな男たちを一瞥しただけで特に大きな反応は示さなかった。
しかし、リーダー格の男が、気がついたようにはっとなり、後ろへ飛び退った。
「お、お前はっ! 道明寺……。道明寺…………茜……」
絞るように、声を出す。姉は溜息をついて、静かに響き渡るような、よく通る低い声で一言「失せろ」
それを聞いた男たちは、慌ててその場を去って行った。その慌てぶりがとてもおかしくて、つい声に出して笑っていた。それを見て兄貴も笑みを溢した。
「ほら歩。一人でこんな所ほっつき歩いたらだめじゃないか。帰るよ。……ここは、不良のたまり場なんだからさ」
その不良どもを一瞬で片付けてしまった兄姉は、俺の前を歩いて行った。
ゆっくりと空を仰ぎ見た。
嗚呼、空が綺麗だ。
俺は、先を行く兄と姉の後を追った。