コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 透明度五十パーセントの非日常。 ( No.13 )
- 日時: 2011/06/07 18:42
- 名前: 風琳 碧羅 ◆bimZ8KrNKc (ID: 2RWcUGdy)
- 参照: そして乱入する勇者とも呼べる存在もどき(
五 『俺はどっからどう見ても男だからな』
「それにしても喧嘩慣れしすぎじゃないの、茜」
「そうね、あんたのせいでね。歩はあたしのモノって決まってるのよ」
「いやいや、俺は誰のものでもないからな」
家に戻って、そんな会話が続いていた。最早俺は物扱いしかされなくなっているような気がする。
「それにしても……歩、未だに女の子扱いされるんだね」
兄貴のこの一言に俺は絶望したぜ。自分自身に。
確かに、自分は結構な女顔だとは思っていたが、まさか本当に女扱いされるなど思っていなかった。兄貴も姉貴も外見だけはまともなのに、何故俺だけはこんな外見なんだろうな。
「けど、歩は美少女だから僕が食う。喰らうのー」
「止めろ、兄貴。俺はどっからどう見ても男だからな」
「どっからどう見ても女の子だから女の子扱いしてるんじゃないか」
もう駄目だ、俺泣きそう。……頑張れ、俺。俺は戸籍上も、男だ。だから男として誇らしく生きて行こうじゃないか。……よし、俺は男。女ではないんだ。
俺の頭の中がぐるぐると意味不明な事になっている最中にピンポーンと玄関のベルが鳴った。ちなみに言うと、本日二度目。時間的にはもう三時を回っているから別に大丈夫だと思われる。
「あたしが出るわ」
そう言って、俺が止める間もなく姉貴は玄関の方へと駆けて行った。
俺は最早それを咎める気力もなく、ただ自分が女扱いをされた事に対して項垂れていた。と、玄関から「歩ーっ。お友達みたいよ」と姉の声が聞こえた為、ゆっくりと視線を上げて、意味もなく兄の顔を窺ってから玄関の方へと向かった。
「あ、歩君。こんにちは」
玄関に居たのは、確か同じクラスの女子委員長だったと記憶する。名前は確か——
「御園里桜さん……だったよね?」
彼女の名前を口にした。すると、彼女は「あ……、覚えていてくれたんですね」と少し頬を赤らめて、純粋な漆黒の美しい瞳で俺を見つめた。
覚えているも何も、聞いた噂では彼女は学年一、二を争う程の秀才で、しかも見て分かるように美麗。瞳と同じくつやつやとした緑の黒髪に、整った白皙の顔。俺みたいに綺麗な人に慣れていなければ即刻惚れているだろう。それに加えて、父親が大手企業の社長と来た。性格も最強にいいらしく、こんなに恵まれた女性はなかなかいないんじゃないかと俺は思う。
そして、何故、その麗しきお方が俺の家にやって来たのか、俺の中ではそれが一番の問題だった。
「御園さんはどうしてここに?」
「え、あ、その……。今日休んでいたから……だから、プリントを届けに」
彼女は可愛らしく手を動かしながらそう説明してくれた。「明日は学校に来てくださいね」と最後に言い残して、それから彼女は一礼して去って行った。
「……歩。分かっていると思うけど、彼女に手を出したらただじゃおかないからね」
兄と姉の視線が妙に痛かった。