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Re: 透明度五十パーセントの非日常。 ( No.18 )
日時: 2011/06/17 18:46
名前: 風琳 碧羅 ◆bimZ8KrNKc (ID: 2RWcUGdy)
参照: 歩はある意味卑怯なおん……男の子です、はい(

十 実は俺、女の子だったのか


「……はい?」
「え、だから……。好きですっ!」

 うん、状況は何となく理解した。


 ——これはタチの悪い夢なんだ。そうだろう。


 で、ここで質問だ。


 ——今、俺の事『あ、コイツ滅茶苦茶馬鹿で鈍感野郎だぜ、ひゃっほう』なんて思った奴、挙手。


 ま、それはそうとして。

「何故、俺なんだ? 別に俺でなくとも、もっとかっこいい人なら沢山いる。御園さんと俺じゃ釣り合わないよ」
「そ、そんな事ないですっ! 歩君は可愛いし、この学校できっと一番人気のある男の子なんですよっ!」

 そう言い終えた後、恥ずかしくなったのか「あぅ……」と可愛らし過ぎる声を出して顔を隠してしまった。
 それにしても。
 俺が人気あるなんて初耳だ。

 櫂が人気あると言うのは聞いた事がある。何度も。確かに彼は運動はやたらと出来るし、黒い髪だしな。黒髪の男はモテると言う話を耳にした事がある。
 そもそもだな。男の俺が可愛いというのは恥以外の何でもないんじゃないだろうか。

「ひぇっ!? あ、歩君って男の子だったんですかっ!?」

 いやいやいや。其処で驚かれても。というか、歩君と呼んでいるのだから男だと認識していたんじゃないのか? しかもなぜ今更。今更過ぎるだろ。
 そもそも俺、まだ御園さんから何にも聞いてねえし。

「その前に、だ。昨日何があったかとか全部話してくれ。物凄く頭の中が混乱しているんだ」

 そう言うと御園さんは快く了承してくれた。そして、話しだした。それをまとめると次のようになる。

・昨日、俺が居ない教室で、御園さんが『私は歩君が好きなんですっ!』と叫んだらしい。
・それを聞いたクラスメイト達が、明日伝えたらどうだと冷やかした。
・しかし御園さんは彼等に『自分で言うから黙っていて』と懇願し、俺に訊かれた時の為に嘘の情報を渡す事にした。
・俺に嘘をついてしまったのが少し嫌で、思わず謝っていた。

 ……どうしようもないが。というか省略し過ぎて訳分かんないよな。別に補足説明する気なんてないが。面倒だし。

「わ、わたくしっ。歩君の事が本当に好きなんですっ! 付き合っていただけませんかっ!」

 実を言うと、告白されたのは初めてである。自慢じゃないが。
 どうしたものか。しかも相手が相手だ。

 某有名企業の会社の娘であり、超美形の秀才に告られて、これでオーケーってしていいものなのか?
 なんだか一抹の拭えない不安が心の中で騒いでいる。

「……えっと」
「わたくしじゃ、駄目なんですか?」

 潤んだ瞳で見上げてくる。……ちょっと、なぁ。俺、こういうのに……弱過ぎるんだ、ああ。
 思わず「うん」って言ってしまいそうになったじゃねえか。というか、言ってもいいのか?
 もう頭の中がぐちゃぐちゃで何もわかりゃしない。分かると言ったら御園さんがもう色々と可愛らしいという事ぐらいだ。ちなみに俺は可愛くない。

「……じゃあ、お願いです。歩君がオーケーしてくれないのなら——」

 と、その時、タイミングを見計らったとしか思えないタイミングで、保健室に居たただ一人の部外者、即ち、先生が割り込んできた。

「——私が、歩君に告っちゃおうかしら」

 しかも何て事を言いやがる。先生に失礼だとは思ったが、そんな感想を持たずには居られなかった。というか俺の周り、本気で変人集まり過ぎだろう。
 御園さんは顔を真っ赤にして「駄目ですっ!」と叫んでいるし、先生の方は口に手を当てて上品に微笑んでいるだけだった。
 いったい何なんだ。新たな虐めの一種なのか? 終いには泣いてしまうぞ、誰かが。俺は泣けねえよ、多分。知らんが。責任放棄? よく分かったな。

「と言う事で」

 どういう事で。

「歩君は今日からわたくしの彼女ですっ! 異論は認めませんっ!」

 チョイ待て。彼氏、の間違いだろう。少なくとも、俺は女ではない。見た目が女だと言われたとしても俺は男だ。

「どうでもいいんですっ!」

 全然よくねぇって。

「……やっぱり……歩君はわたくしの事が嫌いなんですね…………」

 何故そうなる。俺はひとっ言もそんなこと言ってないからな。
 見かけによらず、御園さんは結構思い込みの激しい人物のようだ。何故こうも俺の周りにはこんな良く分からない思考の持ち主ばかり集まるんだろう。

「あー、もう分かったよ、いいってもうっ!」
「え……? じゃあ、付き合ってくれるんですね?」

 もう頭の中がくるくるぱーだぜもー本当に。訳がわかんねぇ。
 だから俺は叫んだ。その意味も理解せずに。すると、御園さんは目を輝かせた。そして、確認するように問いかけた。
 俺はもう訳も分からずに「ああ」と簡単に答えた。


 もう訳わかんねぇよ、狂ってしまうな、あいあむくれいじー。
 なんかクレイジーって名前の奴と昔会った気がするが、多分それは夢の中だ。嗚呼俺はもう現実と夢との境界線も引けないのか。


 そこまで考えた時、急にあり得ない程の眠気に襲われ、そのまま昏倒した。