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Re: 透明度五十パーセントの非日常。 ( No.20 )
日時: 2011/06/18 14:58
名前: 風琳 碧羅 ◆bimZ8KrNKc (ID: 2RWcUGdy)
参照: これで最後。とりあえず自己満足だけど完結はさせておく。


十二 ある意味でのしつけ

「ただいま、姉さん、兄貴」
「お帰りー、歩ーっ!」
「歩お帰りーっ!」

 俺が家に帰ると、やはり兄も姉もいた。
 のんびりと自室に向かって荷物を下ろすと、兄が「学校どうだったー?」と、いつものように聞いてきた。
 俺は何気なしに「御園さんに告られた」と口に出していた。

 瞬間、空気が冷たくなった、気がした。

 兄がゆっくりと「……承諾は…………してない……よね…………?」
 続けて姉も「してたら許さないわよ……」と殺気の籠った目つきで見てくる。
 あちゃあ。俺はなんて間抜けな事を言ってしまったんだ。

 俺はどう言い逃れようかと視線を宙に舞わした。それが決定的になったらしい。
 姉は、そう、等と言って、俺の部屋へと入ってきて、兄は無言でドアに鍵を掛けた。俺の逃げ場はなくなった訳だ。

「……あたし、前に言ったわよね? 手を出しちゃいけないって」
「僕の歩なのに…………」


 おーおー。ヤバい。これは冗談抜きでヤバい。
 二人とも目がいっちゃってるし。やー、俺、ちょっと逃げないと命の危険を——


「明っ」
「分かってる」


 二人はそう合図を送ると、一瞬で俺の腕を捕らえ、兄が俺を羽交い絞めに、姉は「ふふふ……」と不気味に笑いながら俺の下へと近づいてくる。
 いつもは仲悪い癖に何でこういう時だけ……!

 そして姉は、何処からともなく鋏を出してきて(というか、俺の机の上のペン立ての中にあった)、その切っ先を俺に向けた。
 実を言うと、俺は極度の先端恐怖症で。こんなのでも……目を向けられない。怖いんだ。

「さて。どう言い訳してもらおうかしら」

 そう言って、更に鋏を俺の顔に近づける。ここまで来ると、俺は思わず顔を背けてしまう。

「……言い訳、ないの? まさか怒られるのわかっててやった、とか?」

 姉は遂に鋏をじょきっと開け、俺の首に当ててきた。ひやりと背筋が冷たくなる。
 そのまま彼女は俺の首に喰い込ませようとする。痛い痛い痛い。

「ごめんな、さい、姉さ……ん」

 俺がそう呟くと、彼女は「その『御園さん』を殺さないといけないようね……これも歩を守るためよ」と言って、鋏を放り投げた。
 今俺を殺そうとしていたのはどこのどいつだ。


「冗談よ、歩。別に、あたしは歩が幸せならそれでいいのよ」


 彼女はそう言ってほほ笑むと、俺の部屋を出て行った。何だったんだ、一体。

 一方兄貴の方は「茜は起こらすと面倒だからねー」と言って、彼もまた部屋を出て行った。


「……何だったんだ、一体…………」


 俺の呟きは、誰にも届かなかった。