コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 金曜日(ほとんど)に出る三題話!みんなで書くページ! ( No.10 )
- 日時: 2011/06/17 20:28
- 名前: 北野(仮名) (ID: bEKYC/sm)
俺が深い眠りから目を覚ますと、外はもう真夏の快晴。
時計の針は昼の一時を指している。
「アラームつけたのにな…」
俺はポリポリと頭をかきながら体を起こし、眠気でぐらぐらと揺れる意識を気合いで覚ましながら大きなあくびをした。
『よう!えらく長い睡眠だったなあ、相棒!』
まだ完全に目覚めていない脳に、やたらと快活で響く声が聞こえてきた。
『ちなみに、相棒がセットしたアラーム、俺ちゃんと鳴らしたぜ?すぐに相棒の手が飛んできて止められたけどな』
声の主はベッドのわきに置いてある、
. . .
腕時計。
機械の声がなぜか聞こえるようになって半年。
突然知らない機械に話しかけられるのも、それを無視するのも慣れた。
大概の機械は一度無視すると
『あ、こいつも俺たちの声が聞こえないんだな』
って話しかけるのをやめる。
だが、致命的なことにこの腕時計にだけは昔一度だけ答えてしまったことがあった。
まあ、何も知らないときに突然腕時計から声をかけられたら、普通びっくりして聞き返してしまうだろう。
しょうがないのだ、しょうがない…
『相棒?なに俺と真反対の遠くを見て悲しい目をしている?まさか、俺の悪口考えてるな!?』
なんで…こんなうるさいやつに…
『そうだな、図星だな?まったくいつもお前は俺を批判することばっかり考えてるな!やっと俺に口を開いたと思ったら、うるさいうるさいうるさいって、お前はうるさい星人かっての!』
「うるさい耳障りだ黙れ」
そう言って俺は時計を引き出しの奥にしまう。
『あ!こら!こんなとこに閉じ込めるな!!基本的人権の尊重!こらほんとに閉じ込めるのか!おい、お〜い……………』
「人じゃねぇだろ…」
一度新しい時計を買おうと思ったこともあったが、あいつが
『よっしゃ仲間がふえるのか!会話も二人より三人のほうが楽しいしな!!』
と騒ぎだしたあたりであきらめた。
ちなみに俺の家の他の電化製品たちも俺が機械の声が聞こえることを知っているが、腕時計のやつが話しかけるたびに俺が一蹴しているのを見て、なかなか自分から話しかけてこようとはしない。
俺は邪魔者が引き出しというそいつにとってはグランドキャニオン以上に深い谷に消えたことにすっきりすると、今夜の用事に備え、栄養をつけるためリビングに行った。
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普段から俺は寝坊が多いため、親も両方放置して仕事に行っていた。
俺は冷蔵庫からテキトーに食べられるものを見繕うと、若干物悲しい朝食&昼食を食べた。
その後、パソコンを起動。
購入して8年になるこのパソコンは、最近起動するたびに異音を奏でるようになってきた。
それでも不平を言わずにしっかり動いてくれる。
俺はそんなパソコンに感謝しながら俺の好きな読売ジャイアンツのホームページにアクセスし、今日のナイトゲームの予定を確認した。
開始時刻は6時。
「よし、今日はまだ余裕があるな」
今日は家の近くの甲子園球場で試合があるので久々に見に行くことにしていた。
「さて、この時間どう潰すかな…」
と暇人にしか言えないセリフを言って悩んでいると、タイミング良く友達から遊びの誘いのメールがきた。
俺は仕方なしに
『やっと出してくれた〜!』
と喜ぶ腕時計をつけ、外に出た。
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待ち合わせの場所で待っているときも腕時計のマシンガントークは止まない。
『なあ相棒、あそこにいるやつ、すごいスネ夫みたいな髪型してるよな』
「ん?ああまあしてんじゃね?…」
『あ、相棒、あの車いま信号無視したよな!?』
「…べつにいんじゃね?事故りもしなかったしよ」
『相棒、いま小島よしおが目の前を通ったような…』
「古すぎて興味がまったくわかない」
『おい相棒、あっちにいるねーちゃん、すごいべっぴんじゃねーか?』
「ッ!!!
どこだ、どこにいる!!」
『冗談だよ、相棒。やっぱり相棒も健全な日本男児だな!』
「………」
そんなやりとりは、ちょっと遅刻した友達がくるまで続いた。
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友達とゲームをしたり駄弁ったりしている間も腕時計のマシンガントークはとどまることを知らない。
『なあ相棒、今日のあいつの服のセンス痛くないか?』
ばしっ。
流石に友達の前で腕時計に話しかけたら変に思われるだろうから、無言で時計を叩いた。
一応機械にも痛覚もあるらしく、今ので懲りただろう…
『相棒!いくらなんでも殴らなくたっていいだろう!それよりあいつよ、あのシャツにあのジーパンはよくないよな?あくまで機械感覚で見たらだけどな』
懲りていませんでした。
(いい加減黙れよ腕時計風情が…)
ばしっ。
『に、二度もぶったな!親父にもぶたれたことがないのに!!』
「いい加減黙れ腕時計!」
しまった!思わず叫んでしまった!
恐る恐る前を見てみると、やはり友達が怪訝な顔でこちらを見ていた。
俺は何もできず、とりあえず愛想笑いでごまかしておいた。
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なんとかうるさい腕時計を抑えて友達との会話を乗り切り、時間になったので甲子園に行った。
飲み物がなんとなく欲しかったので、近くのローソンに入った。
中は虎ファンが山ほどいた。
中でも元気なのはレジ近くを占拠しているシニアの集団で、中央にいるラメだらけのタイガースTシャツを着たじいさんが
「阪神今年こそ優勝—っ!!」
などと叫んでいる。
その阪神を忌み嫌っている俺としては、不快なことこの上ない。
やたらと元気なシニア集団が出ていってから、俺はゆっくりと飲み物を選ぶつもりだったが、もうすでにお茶しか残っていなかった。
まあ何もないよりかはいいので、俺はそれを買って球場に入った。
…ん?球場の中で買えばいいんじゃないかって?
ダメダメ。あんなの高すぎて話にならねぇよ。
だって普通の倍以上はかかるんだぜ?