コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 金曜日(ほとんど)に出る三題話!みんなで書くページ! ( No.12 )
- 日時: 2011/06/17 20:31
- 名前: 北野(仮名) (ID: bEKYC/sm)
スタンドに着くと、スタンドライトたちはとても焦った様子でしゃべり合っていた。
『どこだ?』
『どの角度のライトが見ていたんだ?』
『私だ、私。人通りの少ない路地だったぞ』
何がなんだか分からない。
「おーい、来たぞ!何も用がないなら帰るぞ」
『来たか、小僧!実はな、一人のじいさんが甲子園から少し離れた路地で信号無視した車にはねられたんだ。その車はそのまま逃げてどこかへ行ってしまったし、人が全く通らない道で誰もじいさんがはねられたことに気づかないんだ』
「もしかしてそのじいさんって…何か特徴はなかったか?」
『そうだな…服が変だったな。
ラメだらけの虎Tシャツを着ていたな』
「何ッ!?」
俺はそれを聞いた次の瞬間、はじかれたように走り出していた。
≪≪≪≪≪≪≪≪≪≪≪
走り出して五分ほど後。
俺はすさまじく後悔していた。
「路地の場所聞くの忘れた……」
今さらもう一度忘れ物だと言ってスタンドに入るなんてことはできないだろうし、かといってスタンドライト以外に場所を知っているやつは分からないし…
俺が途方に暮れていたとき、再び腕時計が口を開いた。
『相棒、ライトが言っていたことを思い出せ!なんでじいさんは轢かれたんだ?』
腕時計は普段うるさいくせに、肝心なときはやたらと役にたつ。
「え…?あ!分かったぞ!」
俺はすばやく周りを見回すと、目当てのものを見つけた。
そして、こう聞く。
. .
「おい、信号!お前の仲間で近くにじいさんが倒れているやつはいないか?」
—信号無視した車にはねられたんだ—
『ん?ちょっと待ってくれ。いま聞いてみる』
信号は流れを車のスムーズにするため互いに連絡をとり合って調整している。
だから、ある程度近くなら他の信号のことも分かる!
『お、ひとつあったぞ。どうすればいいのか焦っている』
「教えてくれ!それはどこの信号だ?」
『ここから球場を挟んでほぼ真反対のやつだ。この道に沿っていけばたどり着ける』
「よし分かった!ありがとよ!!」
『気を付けろよ!それと、信号はちゃんと守れよ!!』
俺は一目散に球場前の道路を行った。
≒≒≒≒≒≒≒≒≒≒≒
「じいさん、大丈夫か!!」
俺がじいさんのところにたどり着くと、じいさんは頭からわずかに血を流しながら歩道に横たわっていた。
「ん、少年…ワシは大丈夫や…もう若いモンにはかなわないの…」
「じいさんしっかりしろ!待ってろ、いま救急車呼ぶからな!」
俺は大慌てで携帯から119番にかけた。
やく三分後、じいさんは病院へと運ばれていった。
×××××××××××
俺がそこに突っ立っていると、目の前の信号が話しかけてきた。
『あのぅ…さっきのおじいさんが轢かれるところ見ていたんですけど…』
「そうか、信号。でもその車はどっか行ってしまっただろう」
『はい…でもナンバーは覚えています…』
「何!?そんなもん知ってるなら早く言え!!」
『うぅ…すみません…』
俺はその信号からナンバーを聞くと、捜索を始めた。
† † † † † †
まずはそこらじゅうの信号に聞いたナンバーの車を探すようにたのんだ。
次に甲子園の近くのコンビニにあった防犯カメラにも捜索を頼んだ。
ネットワークをもつ防犯カメラは、とても強力な味方だった。
その上、連絡手段として公衆電話を使うことにした。
信号や防犯カメラが犯人を見つけたら、俺の近くの公衆電話が鳴り出すという仕組みだ。
さすがに車が見つかって突然公衆電話が鳴り出したときは周りの人がとても驚いていたが。
俺はあっという間に見つかった車を追うため、タクシーに乗った。
タクシーに乗ったいる間も近くの信号から情報を得て、少しずつ近づいていった。
しかし相手も長い間後ろをついていると、気づいてきたようで、少しずつスピードが速くなっていった。
「おいもっと速く走ってくれ!あの車を見失わないでくれよ!!」
「お客さん、これ以上は制限速度オーバーですよ。っというか、なんでそんなにあの車を追うんですか…」
「ひき逃げだよ、ひき逃げ。あの車にちょっとした知り合いを轢かれてね」
「ひっ…ひき逃げ!?そんなの私も巻き込まれるかもしれないじゃないですかっ!冗談じゃない、そんなのごめんですよ!!」
そう言うと運転手はタクシーを止めてしまった。
「おい!あんたは人を運ぶのが仕事だろう!?追ってくれよ!」
「嫌だ…巻き添えで死ぬのは嫌だ!」
俺と運転手がそうやって押し問答していると、腕時計が横から口を挟んできた。
『相棒、もうそんなやつほっといて、別の方法考えようぜ』
俺は結局タクシーを降り、他の手段を考えることにした。
‡ ‡ ‡ ‡ ‡ ‡
ここで俺と腕時計が思いついたのは、やはり信号だった。
俺は近くの信号に頼んで、あの車の行く先々の信号を赤にしてもらうようにした。
しばらく走ってあの車の行った方面に行くと、信号であの車が止められているのを見つけた。
「動きを止めることはできたけど、俺だけじゃ捕まえるなんて不可能だな…」
『ここはもう警察に頼るしかないな』
「でも証拠もないのに通報して、警察は捕まえてくれるわけないよな…」
しばしの沈黙のあと、突然腕時計が叫んだ。
『…!相棒、あの車よく見てみな』
「よく…?あっ!血痕がついてる!!よし、これで通報できるぞ」
∀A∀A∀A∀A∀A∀
その後すぐに警察が周りを囲み、今までの逃走からは想像もつかないほどあっさりと取り押さえられた。
最終的に、車に乗っていた若いカップルは逮捕され書類送検されることになった。
それから一週間後、俺はじいさんの入院している病院へと見舞いに行った。
じいさんはもうだいぶ回復していて、とくに後遺症などもないらしい。
俺が病室に入ると真っ先にじいさんは礼を言ってきた。
「ありがとう、少年!君はたかが一人の老いぼれを救っただけかもしれないが、その勇気はすばらしいものだ!」
「いや、そこまでたいしたことはしてないと思うけどな…」
「少年、それは謙遜だよ!君は本当によく頑張ってくれた!!」
そう言ってじいさんはばしばしと俺の肩を叩いてくる。
じいさんがずいぶん俺に感謝しているのでなんだか俺は頑張った機械に申し訳なく感じ、思わずぼそっと呟いた。
「………頑張ったのは俺じゃなくて信号……」
俺のその呟きに、じいさんはただただ首をかしげるだけだった。
(完)
この作品のお題は信号、阪神、お爺さんです。
一つ目はカレー、高校生活、エアコンです