コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

Re: 金曜日(ほとんど)に出る三題話!みんなで書くページ! ( No.6 )
日時: 2011/06/13 22:08
名前: 北野(仮名) (ID: upXvIKCB)

続きっす





「おっ、起きた」

目を覚ました時には体育館の倉庫のすぐ裏側にいた。乱暴に引きずられて連れてこられたのか、服には砂利がこびりつき、あちこちに擦り傷ができている。肩を動かそうとするとギシギシと呻きを上げるような音がした。腕を上げようとするが、少しも上げることができなかった。その理由はさっきまでとは違っていた。

「ロープか…」

腕と胴は強固な縄でしっかりと括り付けられていた。一寸たりとも動かないほどに。周りを見渡すと仲間も同じ仕打ちを受けていた。太さが一センチはありそうな頑丈なロープ。腕力だけで引きちぎるのは確実に不可能だ。

「もうすぐあの子が来るよ。ボッコボコにされるのを眺めてなよ」

クスクスとあいつらがこっちを見て嘲笑した時だ。放送が入ったのは。

〔今からテストを始めます。体育館横の人たちはよく聞いて下さいね〕

「ん?なんだ?」

ザワザワと動揺が広がり、不穏な気配が漂う。今聞こえたのは女の声…

〔受けるならばすぐ横の体育倉庫に、受けないならば尻尾を巻いてお帰りなさい。鍵は外してあります〕

「ふぅん、嘗めた真似してくれるじゃん」

ずっとヘラヘラしっ放しの軽い奴も流石にイラついたのか、眉間に皺が寄っている。それより、女の声ってもしかして…

そう、始めに黒田に絡んだ男が考えたとき、縄にくくったまま自分たちを置いて体育館倉庫に奴らは乗り込んでいった。

「不良潰しだか何だか知らねーがたたき潰してやる」

ただそれだけ言い残して、連中の姿は扉が隠してしまった。












「誰だか知らねーがテストを受けてやんよ」

ヘラヘラした薄ら笑いを完全に押さえ、真剣さと緊迫さを携えて倉庫内に反響するよう低く言葉を放った。うっすらと陰った用具の集落にゆらりと動く一つの影、その肉眼では分かりづらい微細な違いを見逃さなかった。目をスッ…と鋭く細めてターゲットがいるであろう位置の大体の予測をした。もうこの時点で黒田のことは完全に忘れていた。なぜなら不良潰しは……







———女だから


もう標的は己と同じ称号を持つ者へ恐怖を与えるぽっと出の目立ちたがり、不良潰しへと移り変わっていた。

「メスがオスの上に立つんじゃねーよ」

〔テスト・スタート〕

またあの放送が入る。これが意味することは一つ。今まだあいつは放送室にいる。だったらさっきの影は一体何だと言うのであろうか。そう一瞬だけ考えたがすぐにその考えを打ち消した。レコーダーの類を置いているのであろう。そうでもないとさっきの影の説明が付かない。

「テストはもう…」

ダンッとコンクリートの床を蹴って駆け出す。さっき見た影の足元を狙って。

「終わりだよ!」

そして壁となっている跳び箱を蹴り飛ばした。キチンと並べられていた跳び箱が一閃の蹴りで崩壊する。ガラガラと騒音を鳴らして雪崩のように倒れこんだ。

〔合格です〕

「何だと!」

馬鹿な…タイミングと結果が正しすぎる。本当に放送室にいる?その場合この倉庫にいるのは内通者ということになる。まさか…

「ちゃんと招待状見てくれたんだ。そして不良潰しの真似事なんかしたんだね?黒田君」
「半分正解」

跳び箱の裏のマットの下から黒田が姿を現した。色々と薬品を入れたビーカーに蓋を付けたような容器をごちゃごちゃとポーチに入れている。

「同級生の女子にでも頼み込んで放送を頼んだ。そしてケータイあたりで連絡を取り、指示を出した」
「半分正解」

眉一つ動かさないほど冷静にそう答えた。

「君は負けず嫌いかな?自分の出したさっきの状況という名の問題を解かれたことがあっさり解かれて素直に負けを認められない」
「完全に不正解」

それを聞いた途端、普段ヘラヘラしている奴の額に血管が浮かび上がった。最大級にイラついている証拠だ。これはあいつ終わったな、と全員がそう思った。