コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

Re: 金曜日(ほとんど)に出る三題話!みんなで書くページ! ( No.7 )
日時: 2011/06/13 22:09
名前: 北野(仮名) (ID: upXvIKCB)

ラストっす




「とりあえず一発殴られとこうか」

ジャリッと砂を踏み潰して黒田に向かってゆっくりと歩を進めた。だが、黒田はそんなことでは揺るがずにポーチから物を取り出した。片方はやや大きく、中に液体が入っているようでもう一方は少し小さめで固体が入っているようだ所々開いている小さな穴から白い煙が吹き出している。

「取り出したるは二つのフィルムケース」

キュポッと間の抜けた音がして二つのケースが開いた。液体は透明で固体は白色だった。

「中にあるは真水とドライアイス」

一番イラついている不良の目の端がピクッと動いた。

「これを混ぜると…」

突如凄まじい白煙が発生する。ドライアイスが水に浸かり、急激に溶け、二酸化炭素が発生、さらにはドライアイスにより露点を通りすぎて水蒸気が結露、細かい水滴と化した。

「簡易煙幕〜♪」

冷たい霧が薄暗い空間を充満させる。その霧に紛れて黒田は姿をくらませた。

「こしゃくな真似を…」

よくもまあこうも俺たちにこんな嘗めた態度を取れるな、苛つきを頂点にまで達させた状態で辺りを見回した。白い幕に潜む薄い影、それが目の端に止まった瞬間、雷のような蹴りを放った。鋭く素早い、正確な一撃はその体を捉えた。

「ゲホォッ!」

聞き覚えのある呻き声が足元から聞こえる。まさか今蹴ったのは…

「汚ないな…」
「知略的って言ってよ」

今蹴り飛ばしたのは自分自身の仲間だった。黒田は霧の中で同士討ちを狙っているようだ。だが、厄介なのはそこではない。なぜなら動かなければ良いだけだからだ。しかしそれができない理由がある。黒田の存在だ。ぼぉっとしていたらあいつに取ってチャンス以外の何物でもない。向こうは自分自身以外は全員が敵。だから誰を殴っても大丈夫。ところがこっちはそうはいかない。なぜなら当たりは一人だけ。それ以外は全て味方。迂闊に手を出したら自分で自分の首を締めることになる。そんなことを考えているときだ。ベシャッという音がしたのは。制服のズボンに白いドロドロしたものが付く。うっかりそれを踏んづけてしまった。紙を踏み潰すようなくしゃりという感覚が足から感じられたあと氷の上で摺り足をするように靴は簡単に滑った。

「なぁっ!?」

勢い余ってその場に倒れる。妙な物質の真上で尻餅をついてしまった。ズボンを浸透して冷気が伝わってくる。鼻にすっと入ってくる甘い匂い、これは…

「アイスかよ」

溶けかけてグリップが逆の意味で抜群の半液体のアイスを黒田は床にばらまいた。位置を把握しているのはその本人だけ。言っている間に水蒸気は晴れてきた。
「取り出したるは金属」

ポーチの小さいポケットから白銀の金属を取りだした。さっき使った水の入ってフィルムケースを取り出した。またしても取り出した物を水に浸けた。

「ナトリウム爆弾」

ケースの蓋を閉じてすぐさま相手に投げつける突然のその行動に反応出来なかった。針で突き刺した穴のように小さな光が生まれた。点はケースの中を暴れまわり光の線へと化していく。一本だけに止まらず行く筋もの輝きを放つ。フィルムケースはその熱と圧力に耐え切れず、所々融解してひしゃげて弾け飛んだ。

「くそっ」

反射的に手で顔を覆う。光はさらに激しくなり、手を焦がしかけたところでようやく治まった。その時だ、斜め前から黒田が突っ込んで来たのは。ほんの少しの間体が硬直したが、すぐに冷静に戻り、ターゲットを見据えた。そして先程から何度も使っている蹴りを叩き込んだ。何故だろうか、黒田の胴を完全に脚は貫通した。人肌とは思えないほど脆く…

パキィンッ

「しまっ‥」

今蹴りを決めた180度反対の方向から背中に衝撃が走る。パラパラと前方でガラスが飛び散る。振り替えると黒田が肩でタックルしていた。

「鏡かよ…」

いきなりの一撃に戦力どころか戦意も打ち砕かれた。そして、ゆっくりと膝を折った。

「一ついいか?」
「何だ?」

倒れたまま不良は黒田に問い掛けた。

「半分正解ってどういうことだ?」
「そうだな。結論から言うと不良潰しは俺だ」
「はぁ!?そいつ女なんじゃあ…」
「誰が不良潰しは一人と言った?」
「あ、そう」
「俺は不良潰しの片割れだ相方は一回ミスって姿を見られた。だが、幸運なことにそれで俺は活動しやすくなった。男だから不良潰しじゃあないと油断するからな」
「な〜るほど」











最近不良潰しという連中がいる。男女の二人組をリーダーとする、とある高校を絞めていた集団。ある事件を境に何かが変わったのだとか……




          三つ目終わり