コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 金曜日(ほとんど)に出る三題話!みんなで書くページ! ( No.9 )
- 日時: 2011/06/17 20:26
- 名前: 北野(仮名) (ID: bEKYC/sm)
- 参照: これは雪国の作品だよ
今回は作者の友人の作品です。
その人忙しいんで代わりに俺が投稿するよ。
二作品連続で行くからねー。
「暑い熱いッ!!!!」
いつも昼になるとウチの店に食いに来る顔見知りの客が、できたてのカレーを頬張ってわめいている。
「いやー、そらこんな夏の真っ只中に辛さ最大のカレー冷ましもせずに食うと熱(暑)いだろ」
俺は皿を洗いながら言った。
ここはとあるさびれた商店街の路地にある
「本格!インドカレー」
という店だ。
どうも胡散臭い名前だが、この店を開いた親父のカレーはインド仕込みなのだから看板に偽りはない。
俺は違うけどな。
俺も今年で三十路になるが、このカレー屋はやっていて全く飽きない。
収入は少ないが、贔屓にしてもらっている客が何人かいるおかげでなんとか生きることができている。
「あんた、この店エアコンあるんだから、つけたらどうなのさ!見なよ、現在気温35度なのよ!」
「お客さん、悪いがこのエアコンはつけるわけにはいかなくてな」
「なんかあるのかい?壊れてるとか?」
「いや、ちゃんと動くよ。そんなんじゃなくてよ、昔ここにいたバイトのやつに動かすなってだいぶ前に言われてるんだよ」
「なんで店長のあんたがバイトの言うことなんか聞いてるの?そんなん無視してつけりゃいいじゃない」
「あの頃の俺はバイト以下の立場だったからな…」
「なになに、そんな昔の約束守ってんの!?なんであんたがそんな約束守ってんのか気になるなぁ。教えてよ」
「そうだな、まだ時間もあるしな…
あの頃の俺は、まだ高校に入りたての若造だった…」
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高校に入学した時の俺には目標があったんだ。
『高校三年間の間に彼女をつくる!!』
っていうしょうもないモンだがな。
「で、結局あんたに彼 女はできたの?」
「いんや、できなかっ た。」
まあ、そんな目標をかかげながら、俺の高校生活はスタートしたんだ。
滑り出しは好調だった。
なるべくフレンドリーに、と心がけた甲斐あってたくさんの人と話をする事ができた。
でも、やがて進学校の厳しい勉強についていけなくなっていき、周囲からバカだアホだとからかわれ、目標なんかどうでもいいや、って感じにやる気がなくなってしまったんだ。
「うわー、ドンマイだ ね」
「当時の俺は全然気に してなかったけどな」
そんな中、奈落の底まで落ちた俺を、引っ張り上げてくれたやつがいたんだ。
「ねぇ、何読んでんの?」
一人で読書をしていたとき、俺は声をかけられた。
そいつは同じクラスの女子だった。
「へぇ、グリム童話かぁ」
「…イメージに合わないグロさが好きなんだ」
俺が答えると、そいつは目を輝かせて言った。
「えっ、グリム童話ってグロいの!?また読ませてよ!」
俺は当時陰気になっていた俺にはなしかけたそいつの勇気と気迫に圧倒されながら、答えた。
「ああ…別にいいよ」
「ほんと、ありがとう!」
んで、それから俺の生活は一転、明るくなった。
休憩時間も、いろいろな本の話題で盛り上がった。
「へぇ、よかったじゃ ん」
「グリム童話には感謝 だよ」
ちなみにこのときはまだ、カレー屋は親父が経営していて、俺はその手伝いをしていた。
ある日の放課後、俺はいつものようにあいつにはなしかけた。
するとあいつは、
「ゴメーン、今日はバイトの面接があって、はよ帰らないとダメなの」
と言って、手を振りながら帰って行った。
俺は少し寂しさを感じながら、帰路についた。
家では、かぎなれたカレーの匂いの中で親父がナンをタンドールで焼いていた。
店のカウンターをよく見ると、なんだか見慣れた顔のやつがそこに立っていたんだ。
「あれー、なんでグリム君がここにいるの?」
「グリム君?…まあいいか。
俺は、この店が家だからここにいるんだよ」
「ほんとに!?じゃあこれからはバイトのときも一緒だねっ」
このときばかりは神様も俺に味方してくれたんだなって思ったよ。
んで、それからは学校でも家でも楽しくてさ、ああ俺は青春してるんだなって感じだったよ。
知り合ってから一年ほどたった頃だったかな、一緒に帰っている途中だった。
突然あいつはこんなことを聞いてきたんだ。
「ねぇ、グリム君って好きな人いるの?」
俺は脈絡のないあいつの質問に、正直に答えた。
「まあ、気になってるやつはいるな。」
「うわー、フラグおも いっきり立ってるじゃ ん」
「え、あれってそうい う意味だったの!?」
「…あんたって以外と 朴念仁なのね」
まあ、その質問をするときのあいつの顔があまりに可愛くて、俺は惚れちまったんだ。
それ以来あいつと会うときは緊張して言葉も出なくなってしまったんだ。
「…あんたって以外と 初心なのね」
あいつが俺のことをどう思っているかはそのときの俺には分からなかったんだ。
で、あいつと話をする機会がだんだん減っていって、しまいには愛想を尽かされたんだろうな、あいつは家の事情だと言って遠くへ引っ越してしまったんだ。
そのときに最後にあいつに言われてのが、なぜか
「店のエアコンはつけずにいつかはずして」
だったんだ。
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「あれ、エアコンはずしてないじゃん?」
「なぜかな、あいつの思い出をはずすのはどうかなって思ってさ」
「でもはずしてくれ、って頼まれたんでしょ?」
「…そうだな、あいつに頼まれたんだもんな」
それから俺はその客に協力してもらい、エアコンをはずした。
すると、エアコンの裏から何か紙切れがひらりと落ちてきた。
よく見ると、それは手紙だった。
あいつの名前の下に、小さなハートのシールが貼ってある。
俺はさまざまな思いがよぎる頭を落ち着かせ、手紙を開いた。
そこにあいつの字で書いてあったのは……
(完)
ラストは想像にお任せします、だそうですよー