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第五話



「その答えは──君の名前にある」
「名前、ですか？　どういうことか、分かんないんですが……」

　ギリシアは、ゼウスの言葉の意味が分からず、首を捻った。
　
「それは、自分で知るしかない。俺から言うわけにはいかないし」
「はぁ……」
「さて、まあ話はこれぐらいでいいだろ。十分伝わっただろうし」
「いや、何も伝わってないんですが……。全くと言っていいほど疑問が残りまくって……」

　まだ何も分かっていなかった。
　自分は、何者なのか。
　なぜ、ここにいるのか。
　疑問ばかりで、正直頭がグルグルしていた。
　
「まあ、何とかなるさ。ほらほら、ヘルメス、部屋に案内してやってくれ」
「はい、では行きましょうか？」
「う……行けばいいんでしょう……」
「はい」
　
　ヘルメスは、ゼウスに頭を下げてギリシアに向き直ると、にこりと微笑んだ。
　ギリシアが、むすっとしていたが特に気にする様子はなく、踵を返すと歩き出す。
　ギリシアも渋々後を追う。
　


　　　　　　　　　　　　★


　案内された部屋は、いたってシンプルな部屋だった。
　ベッド、机、椅子など必要最低限のものしかないという状態であった。
　
「じゃあ、何か必要な物はありますか？」
「いや……特にないですよ」
「そうですか」

　ヘルメスは、腕を組んで何かを思案するようなしぐさを見せ、

「あと、勝手に外に出ないでくださいね。大変なことになりますから」
「大変なこと？」