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- Re: 【気のせい】絶対神道ギリシアちゃん【十一話更新!】 ( No.68 )
- 日時: 2011/09/05 17:32
- 名前: 王翔 (ID: PSQFek5o)
- 参照: http://ameblo.jp/686-7777/
第十一話
白と青の鮮やかなグラデーションを映す空。
窓の向こうに展開するのは夜明けの色彩だった。
ギリシアは、しばらく空の美しさを堪能した後、テーブル前の椅子に腰を降ろす。
テーブルの上に置いてあった、もらったばかりの本を肘をついた状態で、つまらなさそうな表情でパラパラと意味もなくめくった。
それにも飽きて、本を閉じると嘆息。
「……つまんないです。何なんですか……、何かこう、面白いことはないんですか?」
不満そうに呟きながら、足をブラブラさせていると不意にドアをノックする音が部屋に響き、ギリシアは慌てて姿勢を正し、返事をする。
「何ですか!?」
ドアが開き、ヘルメスが赤色のコートらしきものを持って歩み寄って来た。
それを差し出され、ギリシアは怪訝そうに眉をひそめる。
「何ですか、これ……」
「ギリシアさん、まだこの世界のこと良く知りませんよね? ですから、今日は寒いところに案内してあげます」
「そういうことですか」
寒いところに行くならば、コートなどはあった方がいいだろう。
ギリシアは、納得してコートを受け取った。
★
コートを着たギリシアは、ヘルメスに連れられ、風と白い結晶が吹き乱れる白銀の大地にいた。
寒風が吹き上げると、枯れ葉の粉塵が狂ったように舞い乱れる。
凍てつく風が顔をかすりながら吹き、軽い痛みを感じるほどであった。
「うう……、寒いです」
ギリシアは、ぶるぶると震えながら呟く。
白く濁る吐息を凍りつくような風がさらっていく。
「でも、こういうのもいいでしょう? ほら、周りに目を凝らしてみてください。きれいじゃないですか」
ヘルメスは、やわらかで落ち着いた声で告げる。
一切寒そうな様子は見せず、服もいつもと変わらない。
「確かに、きれいですけど……何でヘルメスは、コートも着てないのに平気なんですか?」
「まあ、僕達には寒いとかそういう概念はありませんから」
「そういうもん、なんですか……」
ふと、視界に何かが映った気がした。
ギリシアは難しそうな表情で白く濁る世界に目を凝らす。
「どうしましたか?」
「いや……、何でもねーです……」
複雑そうにしながらも、そう答えた。
神であるヘルメスが気づかないなら、気のせいで何もいないのだろう、と思い込んだ。