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第十二話



　凍てつく吹雪のなかをしばらく歩き続け、ヘルメスが足を止める。
　ギリシアは、怪訝そうに尋ねる。

「どうしたんですか？」
「ここで、待っててくれますか？　少し、取って来たいものがありまして。あそこは、危ないですから」
「え？　ちょっ……置いて行かないでくださ」

　そう言いかけたときには、ヘルメスの姿は消えていた。
　ギリシアは、涙目で呟く。

「……ひ、ひどいですよー……残していくなんて……」

　ぶるぶる震えながら、その場にしゃがみ込んだ。
　なおも吹き続ける吹雪は、寒さを感じさせるばかりだった。
　
「あれ？」

　また、何かが見えた気がした。
　不思議に思い、周囲を見回すが何もいない。
　
「何なんですかね……？」

　と、その時だった。
　白いモヤモヤした、煙のようなうごめく物体が周囲を取り囲んだ。

「な、何なんですかーーー!?」

　ギリシアは、そう叫び、ぶるぶる震えながら頭を抱えた。

「私なんか、食べてもおいしくないですよー……」

　瞬間、白いモヤモヤが何かに切り払われ、消え去った。
　はっとして、上を見上げると槍を持ったアテナが立っている。
　
「大丈夫？」