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Re: 憂鬱スター !  ( No.19 )
日時: 2011/08/12 17:54
名前: さく ◆z8XkX1aJMs (ID: opLc/10u)




「私ね、手塚真澄がすきなのー!」
と言い出したのは、長年の友達、いや親友の夢乃だった。
「へえ」と私が間抜けな声を出して、汗をかいたグラスを手にとり冷たいレモンティーをすすった。
「いやいや、その反応おかしくない?」
「普通じゃない? てか、何で手塚よ?」
と私が聞くと夢乃は目をキラキラさせて言った。
私は別に手塚のことが好きではない。

「えー、なんかねすっごいやさしいしかっこいいの!」
「……優しい? かっこいいはまだわかるけど優しいは否定だなー」
私が夢乃に反論すると、夢乃は食べていたホットケーキをおいて、むっと顔をした。
「美里はわかってないなー! 手塚はすっごい優しいんだよ? 日直でプリント持ってたたら手塚が手伝ってくれたんだよ? もう惚れる!」
「夢乃はかわいいからすぐに手塚惚れちゃうかもねー」

夢乃はすごくかわいい。目がぱっちりしてて、髪の毛もふわふわで、声も甘ったるいっていうか甘い声をしている。
それに対して私はお世辞にもかわいいなんていえない、普通の顔して普通の声で、普通の声っていうのはおかしいかな? まあいいやとりあえずかわいくはない。


そう夢乃と会話したのが一週間前。
夢乃は手塚に告白をした、きっと手塚と夢乃は付き合うんだろうなと思っていたら夢乃はぐしゃぐしゃな顔で帰ってきた。
「……どうしたの!?」
と私が声を上げると夢乃はしゃっくりをあげながら「ふられちゃった」と言った。
「え……? 何で?」
夢乃は手の甲で涙をぬぐいながら言った。
「好きな人いるんだってぇ……」

私は教室を飛び出した、手塚がどこにいるかなんて知らないけど、とりあえず走った。
渡り廊下、体育館、玄関、とりあえず走った。
手塚は自動販売機の前にいた。

「手塚……」
「あれ? 美里? どうした?」
あまりにも普通の顔をしているもんだから、私は一気に頭に血が上り、手塚に近づいた。
「なんで、夢乃のことふったのよ!」
こんなこと手塚に言ってもどうしようもないな、と言った後に思ったけど言ってしまったもんは仕方がないか。
「何でって……別に」
「別にじゃなくて……好きな人ってだれ?」

核心に迫ってしまった。手塚は難しい顔をして私と目を合わせた。
「……あ、ごめん。言いたくないよね」
と私はパッと手塚から顔をそらした。聞いてもどうするの?

「目をそらすなよ、俺がすきなのは——」
「言わないで!」

私は手塚の言葉を制して走った、というか逃げた。


聞きたくない、聞きたくない。

俺がすきなのは——、お前。
私が制する前に聞こえていた、お前って。


聞きたくなかった、でも聞きたかったのかもしれない。

私の目からは無色透明の冷たい涙が流れていた。

( 聞きたくない )