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Re: 憂鬱スター !  ( No.33 )
日時: 2011/08/18 18:27
名前: さく ◆z8XkX1aJMs (ID: opLc/10u)





不器用なんだよ、知ってた?
うまく伝えられるほど器用じゃないよ。

「うるさいな、佐々木!」
「うわー怒った! 国木田が怒った!」
私はコンピューター部の部室で叫んだ。
コンピューター部の部室にはクーラーがあるけど現在使用禁止ということでぜんぜん効き目のない扇風機がくるくると首を回していた。
「この暑い日にぎゃんぎゃん! 隣で数学の答えペラペラいいやがって!」
と私が言うと佐々木は大爆笑をしながら「国木田面白い」と言った。
「ああ……もう成績下がったらいけないんだから」
「ん? なんで?」
佐々木は首をかしげながら私に聞いた。
ミーンミーンと窓越しからうるさい蝉が私の耳の奥に響いた。

「親が厳しいの。成績を落とさず3年間。じゃなきゃ、好きなことができないから。部活も全部」
「……ふぅん。まあ俺には関係ないけど」
冷たく突き放された。くるくる回る扇風機が止まった。カタカタという音が部室に響いた。
ついに扇風機までもがご臨終か……。などと思っていると、

「でも、俺はそうやって何でもがんばる国木田が好きだよ」
あまりにも自分がいいたい言葉がさらりと佐々木から出てきたもんだから、びっくりした。
「佐々木、私——」
ぐっとのどに力がこもった泣きそうだった。
でも何でか分からないけど先に涙が出てきた。ぽろぽろと。

親からの声、親からの嫌味、周りからの期待、全部に押しつぶされて進学校に通って。やっと見つけたコンピューター部の部室までもが壊されてしまう恐怖、佐々木と会えなくなる寂しさ、全部が一気に襲ってきた。

「え、何で泣くの? ちょっと困る」
「……わかんない……私、佐々木のことが好き」

私がそう言うと佐々木は「ああ、もう!」と息と一緒に吐き出すように言った。
あ、断られる。そう思った。


「俺もお前のことが好きだ。国木田。
 お前が背負ってるもん全部一緒に背負うぜ」




( うそのないあなた )