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コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 憂鬱スター ! ( No.37 )
- 日時: 2011/08/20 17:35
- 名前: さく ◆z8XkX1aJMs (ID: opLc/10u)
きっと、僕は世界で一番の臆病者だ。
目の前に好きな人がいて、二人きりという状況をうまく使えずにいた。
教室で委員会の残りで冊子を作っているところだった。
彼女が教室にプリントを貼らなきゃいけないと言い出し、僕がイスの上に乗り、貼っている。
「あ、もうちょっと左! んー……右?」
「どっち!?」
彼女のあやふやな指示に困りながら、僕はプリントを画鋲でペタリと貼った。
「よしっ! じゃあ冊子作りに戻るかあ!」
と言い、くるりと僕に背を向け、サラサラの髪の毛をなびかせながらイスに座った。僕はイスを片付けながらそれを見ていた。
イスを片付け終わったので、彼女と向かい合う形で座る。
無言でパチパチとホッチキスで止める音だけが教室に響く。
「……ねぇ」
彼女が口を開いた、僕は「ん?」と作業をしながら返事をすると彼女は「やっぱりいいや」と言った。
「え、何? 気になる」
気になったから聞くと彼女は「何も」と言った。
あんまり問い詰めるとよくないか、と思い作業に戻った。
もう6時、そろそろ下校のチャイムがなるなと思いながらも作業は半分も進んでいなかった。
「益田君は好きな子いないの?」
不意だった、僕は「えっ? え?」と言うと彼女は「いないのー?」と笑いながら聞いた。
僕はこのチャンスを無駄にするわけにはいかないと思い言った。
「いるよ。目の前に」
そういうと彼女は大きく目を見開いて、「嘘だー」と笑った。
「嘘、じゃない……」
と言うと彼女はまっすぐと僕を見た。もうホッチキスの音はしない。
声が震えた、ああ臆病者。
「……俺は、宮崎唯が好きです」
「なんでフルネーム?」
「返事は、その……」
「お願いします。益田翔太さん」
( 臆病者の目の前 )
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