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Re: 憂鬱スター !  ( No.42 )
日時: 2011/08/22 18:11
名前: さく ◆z8XkX1aJMs (ID: opLc/10u)




きっと、私は先生の優しさに溺れていただけかもしれない。


「……松田先生?」
私がカラカラと滑りの悪い、科学準備室の扉を開けると松田先生は白衣を着て、いつもの席で座ってプリントをめくっていた。
「おー、安本」
といいながら手を上げ、こっちこっちと手招きをする。
私は重たいプリントをどさっと先生の右隣に置いた。
「ごくろうさま。使って悪いな」
先生は何事もなくそのプリントを一枚取り「安本に任せると仕事が早く進む」と言った。先生の何気ないその一言にドキドキした。
西日が差し込む教室はぽかぽかとしており、ふっとすると寝てしまうような気温だった。

「いえ、大丈夫です」
私は先生の受け答えに笑い、科学準備室を後にしようとしたとき先生が——。
「安本ーっ!」
と言った。私は後ろをぱっと向くと、同時に何かが飛んできた。それを瞬時的にキャッチする。
ぱっと握った手を開くと小さな紙に包まれた飴が手の中に転がっていた。
「……飴ちゃん?」
「疲れてるなら言えよー聞くし、白衣貸すから」
先生はプリントをめくりながらだが、私にそういった。

科学準備室を出ると、すこしだけ冷たい空気が頬をすべるように抜けた。
私はペリペリと飴に着いていた紙をはがす。あの西日のせいか、飴は温かかった。ふんわりと香るイチゴのにおいは先生のにおいを思い出した、ああ、先生のにおいがする。

口の中では少し溶け、下にじんわりと香りが広がった。


紛れもない恋だった。
イチゴのにおいは白い白衣とは対照的な温かい香りだった。
先生、先生。



「……好きです。先生」



季節外れのイチゴのにおいはふんわりと全身を駆け抜けた。


( 先生の白衣2 )