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コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 憂鬱スター ! ( No.53 )
- 日時: 2011/09/04 12:28
- 名前: さく ◆z8XkX1aJMs (ID: LJORQFwR)
「早野結城です」
幼い彼が黒板の前で小さく言った。
すごく不安そうにシャツを強く握っていた左手を今でも覚えている。
早野結城君か、と私は心の中で何回も唱えた。
彼は隣の席に座った。そして、チラと私のほうを見て先ほどの緊張した顔とは違った憎たらしい顔を見せた。
そして、私の名前を確かめるように呼んだ。
「せ、ん、ば?」
「船場千早」
私が言うと、「ちはや」と彼は言った。
初めてだった、男の子に呼び捨てをされるのが。みんな「ちはやちゃん」とか「ちーちゃん」とかだったから。
「よろしく、千早」
「……よろしく。結城」
あれからもう9年。8歳の小学2年生の時に彼が転校してきて、中学も高校も同じところで。
私たちは17歳になっていた。
いつの間にか、私の小さいころを知る子が少なくなっていく中で彼だけは私の幼いころを知っていて、そして私も彼のことを知っていて。
彼は成長するたびにかっこよくなり、私は幼児期のまま成長した感じで顔は童顔で慎重も驚くべき150cmという残念な感じだ。
彼は9年経った今でも私のことを「千早」と呼び、よく私のクラスに来る。そして「千早ノート貸して」とか「教科書貸して」「辞書貸して」とかくる。
私は大きなため息を吐き、電子辞書ではなく重たい紙の辞書を彼に渡すのだった。
9年の中で私の気持ちも変化した。
いつの間にか、結城とうまく呼べなくなった。それは、私の恋心というものが邪魔をするからだろうか。
時間って酷だな、気持ちが変化していく。
もうすぐ10年、彼とどこまで一緒に居れるのだろう。
( 時間とアンバランスな気持ち 1 )
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