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コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 憂鬱スター ! ( No.54 )
- 日時: 2011/09/10 10:43
- 名前: さく ◆z8XkX1aJMs (ID: LJORQFwR)
あ、と私は声を漏らした。
バサバサと大きな音を立てて本が落ちた。図書室の倉庫で、私は地理の先生に頼まれた大きな資料を取ろうとしているところだった。
「最悪……」
と言いながら落ちた数冊の本を拾った。
古い紙の匂いがふんわりと本を持ち上げるたびに香る。小さな高い窓からはまぶしい橙色の光が入ってくる。
一通り本を片付け終わると、倉庫の扉が開いた。
「千早?」
すぅと通る声が私の耳元に届く。後ろを振り向くと、真っ白なワイシャツを着ている結城が立っていた。
「何してるんだ?」
「資料探し」
端的に私が答えると結城は「ふぅん」と返してこっちに歩いてきた。
「結城は何をしてるの?」
「俺、図書委員で今日鍵当番なんだよ、んで倉庫開いてたから」
ああ、結城は図書委員だったか。といまさら思い出して私は適当に返事を返した。
私が資料探しを始めると、倉庫の中は無言となった。
無言になってから5分くらいたって、結城が口を開いた。
「告白された」
一度だけ私の動作はぴたりと止まった。そして「誰に?」と聞いた。
「お前のクラスの、庭田さん」
庭田……ゆんちゃんか。と思った。親しく、というほどでもないが親しくないわけではない。
「返事は?」
まるで私は一切の感情を込めないようかのように冷たく言った。資料探しをしているためか指先が少し黒ずんでいた。
「……お断りした」
「……なんで」
「俺、松田さんが好きなんだよ」
黒ずんだ指先を見ながら「かわいいよね、松田さん」と言った。
精一杯の強がりを見せたつもりだった。
あなたに好きと言えればどれだけ楽で、どれだけ自分の気持ちに素直になれたことだろう。
10年もの思いを抱えながらも進んでいく自分はあまりにも醜くて。
結城の白いワイシャツは光るほどまぶしかった。
( 時間とアンバランスな気持ち 2 )
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