コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

Re: 憂鬱スター !  ( No.55 )
日時: 2011/09/11 09:04
名前: さく ◆z8XkX1aJMs (ID: LJORQFwR)




へえ、松田さんかあ。と私は心の中でつぶやいた。

図書室の倉庫を出ると橙色の光はなくなり、真っ黒となっていた。
もう後ろを振り向いても図書室の電気はついていないため、結城の顔は見えない。

「……松田さんに告白しないの?」
と私が聞くと、結城は「わからない」と答えた。
わからない? 何が、と思ったけど私は「そっか」と小さく返事をした。
私が何年間も結城を見続け、ためていた思いは何も意味なく、そう誰も知らないところで失恋をした。
結城、って名前を最初に呼んだのは私、そして手をつないで、泣いているあなたを慰めたのも私。
そんな過去の思い出に浸る私は、馬鹿だったのかな。

「私、結城のこと好きだよ」
あっさりと言葉が口から滑った。私が振り返ると結城の顔はぼんやりと影に埋もれていた。私が目をつぶると結城は歩いてきた。
「返事はいらないよ。何年かとためていた思いを言いたかっただけ。
 結城は松田さんのことが好き、だから私は結城に伝えたかったの」
私は一息にそう吐くと、地理の資料をぐっと握り走った。
大きな音がして図書室の扉が閉まる。結城が「千早!」と呼ぶ声も同時に聞こえた。でも私は振り切るように、そして逃げるように走った。


あなたへの思いを吐き出した瞬間、何もかもが楽になった。


あなたはもう、千早と呼ぶことはなくなるのかな。
何十年とためた思いは一瞬だった、そして消えるように。

時間はうまくバランスをとってくれなかった、あなたとの時間は私の気持ちをアンバランスにしていく。
目を閉じて、あなたを思い浮かべるとまだ鮮明で。


アンバランス、とつぶやくと。もうあなたの顔は見えない。



( 時間とアンバランスな気持ち 3 )