コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 憂鬱スター ! ( No.58 )
- 日時: 2011/10/02 10:12
- 名前: さく ◆z8XkX1aJMs (ID: LJORQFwR)
春香が笑いながらぬいぐるみを手に取った。
「これにしようかなー、俊樹君の誕生日プレゼント」
へにゃと笑ったぬいぐるみが春香の腕の中でぐったりしていた。
私が笑いながら「俊樹君のキャラじゃないよー」と言った。
「そうかなー? これ持って寝てたら面白い!」
春香はへにゃとしたぬいぐるみの頭をなでるように触った。
俊樹君は私と春香の共通の友人で春香と付き合っている。
春香が俊樹君にひとめぼれをし、会う回数を重ねて、俊樹君から約3ヶ月前に告白された。
私はなんとなくあの二人が付き合うんだろうなと思ってたから、私は別に不思議な感じはしなかった。けれども心の中で嫉妬、というかそれに似た気持ちが生まれたことは確かだった。
別に私は俊樹君が好きではない。好き、ではない。嫌いと言うわけでもないけど。ただ本当に信じられる子でふっと裏切られた感じはした。
「……俊樹君はどんなのがすきなの?」
私が聞くと、春香はぬいぐるみとにらめっこしており、私のほうを向いた。
「俊樹君? んー……なんだろう。わかんない」
「わからないじゃ買いようがないじゃんかー」
えーっと春香は言いながら口を尖らせた。ぷうと膨らんだ頬っぺたが熱そうに赤くなっていた。あ、俊樹君のこと考えてる。
「じゃあさ、二人でおそろいとかにしたら? 俊樹君のケータイなんもついてなかったからさ」
私がそういうと春香は、パチンと指を鳴らして「ナイスアイデア!」と叫んだ。ちらちらとお客さんが私たちのほうを見るが、春香は気にしない。
俊樹君が笑った顔は好きだな、と私は春香を交えて会ったときには毎回思う。片方にだけできるえくぼとか、それは愛らしく可愛らしい。
春香は俊樹君のことを俊樹君と呼ぶ。当たり前だけど、なんだか私と春香の呼び方はどこか違う。愛の量とか、彼女とか。
そんなものを秤に乗せても仕方がないことだ。
きっと、俊樹君の誕生日が終わるころには春香とおそろいのストラップが揺れていて。私はそれを見ながら少しだけ嫉妬するのだろう。
自分の気持ちがわからないまま。
( 揺れる気持ち )