コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: *叶恋華*Ⅱ β実話β ( No.10 )
- 日時: 2011/07/14 20:49
- 名前: 絵磨 ◆VRtMSlYWsU (ID: PuKarDYu)
- 参照: (゜Д゜)アビョンソ———————————ンッ←
第一話『三年生』
私が動かないと、動かせない。
始めなきゃ、始まらないから。
四月——。
春の匂いが少しずつやってくる、出会いの季節。
全ての始まりの、季節。
今日から私、水城依麻も中学三年生になる。
「行ってきます!」
私は元気よく声を張り上げ、家を後にした。
広がる青空が、とても気持ちいい。
これぞ春!! 新学期のスタート! ……って感じだよね。
今日から少しずつ、少しずつ変わって行かなきゃ。
二年生の時、動けなかった分まで。
今年は受験生だし、勉強も大事だけど——。
それに負けないくらい、恋も頑張らなきゃ!!
友情は……。
二年生の最後の日以来、由良とも優とも連絡を取っていない。
つまり、仲直りをしないまま放置状態なのだ。
春休みと言う、逃げれる期間が終わった今。
なんだか気まずいけれど、まぁ頑張らなきゃね……。
——とにかく、全てにおいて頑張ろう!!
新学期早々、良いことありますように!!
私は心の中でそう願った後、勢いよく地面を蹴り、走り出した。
**
「おはよー」
「髪切った〜?」
「久しぶり〜」
学校へ着くと、休み明けのお決まりの台詞がそこら中から聞こえてきた。
男子はなんだか更に身長が伸びた気がするし、女子のスカートが心なしか少しだけ短く感じる。
……私も今日から、三年生なのかぁ……。
改めてそれを実感し、教室へと足を動かした。
私も、中一の時より少しは成長したかな?
身長も、髪の毛も、行動も考え方も——。
少しは、大人っぽくなったのかな?
そんなのは、自分ではよくわからない。
だけれど、一つだけ昔の頃と変わった。
それは——……。
「——壱〜。おはよー」
「おー、おはよ」
恋に対する、気持ち。
今までの恋とは何かが違う、大きな気持ち。
あんなに好きだった怜緒の時よりも、遥かに大きい恋。
あの頃の気持ちを全部忘れられるくらい、大切な気持ち。
珠紀壱。
私の、大好きな人。
「……」
私は無言で、疾風たちと一緒に居る壱の背中を見つめていた。
久しぶりの、あの姿。
黒い学ランの塊の中でも、一人だけ輝いて見える。
なんでこんなに好きになったんだろう。
自分の心に何度問いかけたことか。
結局答えが見つからないまま、溢れる気持ちだけが積もって行く。
「——依麻」
バッグを持ったまま立ち尽くしていると、後ろから声を掛けられた。
明るく弾む、聞きなれた大きな声——……。
後ろを振り返ると、
「……え、由良?」
里田由良が立っていた。
由良は二年生の最後に喧嘩をしたままだった、友達。
転校してきたばかりの私に、最初に話しかけてくれた三人組の中の一人だ。
「……これ、読んで!」
由良はいつものような明るい口調で、分厚い封筒を渡してきた。
私は慌てながらもそれを受け取り、やっと我に返る。
……由良が、話しかけてきた?
空いている私の席だろう場所に座り、手紙を見る。
見ればそこには、綺麗な字で紙がカラフルに彩られていた。