コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: *叶恋華*Ⅱ β実話β ( No.102 )
- 日時: 2011/08/18 02:39
- 名前: 絵磨 ◆VRtMSlYWsU (ID: A2yHVZ/p)
- 参照: 夏休み、伸びて…………←
第三十話『期待と嫉妬』
体育が終わり、音楽の授業。
私は自分の席に筆箱を置き、座ろうとした。
その時、
「依麻、今あの人が依麻のことチラ見してたよ」
愛奈が笑みを浮かべながらやってきた。
愛奈から私の所に来るなんて、結構珍しい。
そう思いながら、私は愛奈を見る。
「あの人って?」
「壱」
「え、嘘っ!?」
突然出された名前に、私は大声で叫んでしまった。
慌てて口を押え、理性を取り戻す。
愛奈は笑みを浮かべたまま、私を見ていた。
「本当! ……あ、でももしかしたらピアノの方見てたのかもしれないけどね」
愛奈はそう言って、自分の席へ戻って行った。
ピアノじゃなくて、私を見てくれたらいいな——なんて。
そんな頭お花畑な考えを思い浮かべながら、自分の席へ座った。
だから、バチが当たったんだと思う。
時間が経ち、国語の授業中。
先程の音楽の授業は、つまらなかった。
一人そんな事を思いながら、授業中の楽しみの一つ——壱の背中を見つめることにする。
うんうん、やっぱかっこいいねぇ。
変態化している私は、授業そっちのけで壱の方を見ていた。
その時、
「——壱、今日って何日」
壱の後ろの席の不良——島田が、壱に話しかけた。
壱は島田の方を向いてから、再び前を向く。
そして、
「……今日、何日?」
壱から、優香ちゃんに話しかけた。
顔を優香ちゃんに近付けて、優しく声を掛ける。
なんで、優香ちゃんに聞くの?
……駄目だ、私。嫉妬してる。
でも優香ちゃんは、壱にとって『クラスで一番マシな人』。
嫉妬したくないけれど、やっぱりどうしても嫉妬してしまう。
「——漢字のやつ、見せて」
心の中がモヤモヤしてくると同時に、壱は再び優香ちゃんに話しかけた。
だからなんで、優香ちゃんに?
隣の席だから?
壱、女の子とあまり話さないんじゃないの——?
「……」
会話は聞こえないけど、なんか優香ちゃんと壱楽しそうだし。
……あ、壱、笑った。
優香ちゃんにも、あんな眩しい笑顔を見せれるんだね。
私には、見せてくれないくせに。
一気に、授業中の唯一楽しみな時間が、最悪の時間となった。
嫉妬深い女だったら、壱に重いって思われるかもしれない。
だけど——。
やっぱり、複雑な気分です。
「明日は、修学旅行のバスの座席決めするからなー」
モヤモヤ気分のまま時間が経ち、帰りの会。
福野がそう言うと、教室は少し騒がしくなった。
壱も後ろを振り返り、龍の方見る。
「……」
修学旅行のバス座席、かぁ……。
もうあと一か月だもんなぁ……。
せめて、少しだけでも。
少しでも、壱と席が近くなれたらいいな。
そんな願いを込め、『明日はいいことありますように』と心の中で呟いた。