コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: *叶恋華*Ⅱ β実話β ( No.105 )
- 日時: 2011/08/25 19:51
- 名前: 絵磨 ◆VRtMSlYWsU (ID: CSYaft37)
- 参照: どんなに後悔したって もう元には戻らない(by.繰り返し一粒
第三十一話『うぬぼれ』
次の日——。
昨日の帰りに福野が言った通り、バス座席を決める事となった。
ついでに部屋も決めるらしいので、福野は生活委員を呼んで廊下へ消える。
その瞬間に、教室は一気に騒がしくなった。
「——依麻、部屋一緒になろうねん」
「うん!」
遠くの席に居る由良と合図をし合い、私は笑みを浮かべた。
その時に、壱が振り向いたのが視界のすみに入る。
こっちを見てる……けど、
「——壱〜」
「お〜う」
私じゃなくて、疾風を見てるんだよね。
疾風は壱と会話しているし。
そう考えると、やっぱ悲しいなぁ……うん。
そう思っていると、会話が終わった。
……壱は、こちらをまだ見てる気がする。
私は、少しだけチラ見してみた。
「っ!!」
そこで、昨日同様に心臓が止まりそうになった。
嘘……。
壱は、顔をこっち向けていたので、目が合ったのだ。
瞬殺で、壱から逸らされたけど。
こっち見てたの?
なんて、自惚れてしまう私は本当に馬鹿だ。
**
あっという間に時間が経ち、放課後。
今日は、あまり良いことがなかった気がする。
欲張っちゃいけないけどさ——。
明日からGW休み入っちゃうし、数日の間壱の姿を見れなくなる。
そして、そんな時に限って——。
今日、私は二者懇談が入っています。
「二者懇めんどくせぇ……。福野の陰謀だ」
「依麻どんまい」
優も私の次に二者懇談が入っているので、二人で玄関で雑談しながら待っていた。
二者懇談なんて、嫌いだ。
福野と二人っきりになる、あの長い長い時間。
本当に、大嫌いだ。
「——あれ、龍じゃん」
横に居た優が驚いた声でそう言ったので、私は顔を上げた。
見れば、龍は靴を持って帰ろうとしている。
「二者懇、終わったの?」
「あ? あぁ、うん」
「次、誰かわかる?」
「しらね」
あら、龍にしては冷たい対応。
私は少し驚きながらも、去っていく龍の背中を見つめていた。
すると、優が溜息混じりにこう呟いた。
「龍、あいつ短気だからねぇ……」
「え、そうなの?」
新事実、発見。
「うん、意外に短気。……まぁ、壱ほどではないけどさ」
「壱……」
出てきたその名前。
私は、その名前を小さな声で呟いた。
「あいつ、壱は本当に短気だからね。前、由良のことで聞いた時に『は、あいつ論外だし』ってなんか不機嫌そうに言われてさ。私に怒ってきても困るんですけどー、みたいな」
その優の言葉に、私の心臓は少しだけ跳ねる。
由良の時、その対応なら——……。
「……私の時、は?」
恐る恐る、聞いてみた。
私の時も『は、あいつきめぇ』とか、『あんな転校生知らねぇし』とか言われてたらどうしよう……。
そんな不安が頭をよぎった。
しかし、
「依麻のときはね、怒ってなかったよ。『んー……ん、うん』みたいな。ちょいテレ気味に」
「……っ」
優の意外な発言に、私の頬は熱を帯びる。
そ、そんな事聞いてしまったら……。
ドキドキしてしまいますよ!!
「——ちょっとー、引っ張らないでよぉー!!」
心の中で叫ぶのと同時に、騒がしい声が聞こえてみた。
再び顔を上げてみれば、不良カップルと不良女子二人がやってきたみたいだ。
不良彼氏に引っ張られている彼女は、抵抗しながらも嬉しそうにしている。
「「ばいばーい」」
不良女子二人は、ニヤニヤしながら不良カップルに手を振った。
不良彼女は、目を丸くして立ち止まる。
「え、二人も一緒に帰ろうよ」
「——おい。お前、俺と帰るんだろ」
不良彼女の発言に、不良彼氏はそう返した。
そのまま不良彼氏は彼女の首に腕を回して、思い切り引き寄せる。
そして、
「……っ!!」
ぶちゅ。
効果音を入れれば、そんな感じだろう。
……見ちまった。
生チュー、見ちまったよ……。
私と優は、慌てて体ごと逸らした。
こういうのは見なかったことにしよう、うん。
「生チュー……、くっそ」
不良カップルと不良女子二人がキャピキャピしながら去った後、私はそう呟いた。
優も溜息をつき、地団駄を踏み始める。
「いいなぁ、門倉と付き合いたぁい!」
「私も壱と付き合いたいよ〜……」
切実なる、願い。
好きな人と付き合いたいって思えるのは、恋をしてれば当たり前の事だよね……。
壱と付き合ってさ、一緒に二ケツしたり、プリクラ撮ったり、ご飯食べたり——。
そんな、虚しい妄想ばかりが膨らんでいく。
「——あ、そいやさぁ、言ったっけ」
「ん?」
「給食の時、壱が依麻の方見てるの!」
「ぶぃっ!?」
思わず、吹き出してしまった。
え、え、え、何それ。
優の発言に、私は耳を疑った。
依麻が壱の方——じゃなくて、壱が依麻の方——?
え、えぇ!?
「え、それ、え、マジ?」
「マジだって! 私のとこから壱が見えるんだけど、食べてる時とかよくチラチラ依麻の方見てる」
「……っで、でも犬ちゃんとか見てたんじゃない? 私じゃなくて——」
給食時間、犬ちゃんは私の向かいに座っている。
だから十分、犬ちゃんを見ている事をありえるのだ。
だけど、
「ううん、依麻。壱の視線たどったら、チラチラ依麻のこと見てるもん!!」
優が、自信たっぷりにそう言うから。
「……っ」
——だから、期待させちゃアカンって。
私馬鹿だから、すぐ調子に乗る。
馬鹿だから、自惚れちゃう。
こんなこと言われたら、私は何も言えなくなる。
明日から、GW。
貴方に会えない、数日間が始まる。