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Re: *叶恋華*Ⅱ β実話β ( No.113 )
日時: 2011/09/04 17:32
名前: 絵磨 ◆VRtMSlYWsU (ID: TtH9.zpr)
参照: あっあぁぁぁ

第三十四話『タイミング』


タイミングって、大事だよね。


**


玄関に向かうと、ちょうど人が少なかった。
林田がトイレから帰ってきたら、いよいよ話タイムかぁ……。


「誠のことオッケーしちゃえよ」
「おうっ!?」


突然後ろから声を掛けられ、私は変な声を上げてしまった。
振りかえれば、叶汰と疾風がニヤニヤと怪しい笑みを浮かべている。
な、なんだこやつらは……!!


「積み重なったな」
「は?」
「……いや、なんでもない」


疾風の言葉の意味が、わからなかった。
積み重なったって、何が?
本当、この人は意味深な発言が多い……。


……というか、確かこの二人って——……。


「——おい、誠ー! 遅いぞ!」


叶汰は笑みを浮かべ、そう言った。
林田と疾風と叶汰はそのまま靴箱の方へ行く。
……この二人、林田と同じ陸上部だもんね……。
仲いい三人組、集結。


「……ちょ、見て依麻」
「え?」


優が隣で吹きだし、私にそう言った。
な、なんだ……?
優の指差す方向を見ると、


「誠、腰パンし始めてる」


林田が、ズボンを下げて腰パンし始めていた。
……えぇぇぇぇぇぇぇ。
なんで腰パン? 私、腰パンあまり好きじゃないんだよなぁ……。
本当に軽くだったらいいと思うけど、度が行きすぎてケツパンになってる人とか見ると……ね。
この学校、ケツパンが多いんだもん。


「……じゃあ、依麻! 行ってらっしゃい!」
「え、ちょ、優……っ」
「誠が待ってるよ」


優に背中を押され、私はよろめく。
顔を上げれば、林田がこっちを見ていた。
……あははは……。
苦笑いを浮かべると、林田は私に背を向けて歩き出した。
——ついてこい、と?
林田が靴箱の裏の方へと行ったので、私も着いていった。


「……」


そこで林田が向き直り、私を見る。
……あぁ、この沈黙……気まずい。
周りがめっちゃ騒いでる中、ここの沈黙だけが違う世界に感じる。


「…………」


これ、私から話題出した方がいい?
でも、なんて?
一発目から『ごめんなさい』?
デリカシーなさすぎだろ、この野郎。


このまま沈黙に耐えて、林田が喋るのを待つ?
……うん、待つのが一番だよね。
沈黙は凄く気まずいけれど、それしかない。


そう思った瞬間、


「……っ!!」


林田の後ろのドアの所から、見覚えのある姿が見えた。
ちょうど、その人と目が合った。
気だるけな雰囲気。
肩にかけている、キーホルダーだらけのスクバ。


……まさか……。


まさか、あれって——……!!








































「……あ、壱」
「——おう」


壱の声が聞こえ、私の心臓は酷い位に飛び跳ねた。
……なんで……。
なんで、こういうときに現れちゃうの……!?


「……」


お願い、このまま早く帰って——。
今だけは、会いたくない。
勘違い、されたくない。


「——……」


私の願いも虚しく、壱は靴箱の所からこちらへ顔を覗かせた。
なんで覗くのぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!?
私は心の中で絶叫しながら、横目で壱を見た。
壱は私と目が合ってから、すぐ顔を引っ込めて靴を履き始める。


「……っ」


やばい、今だけ穴に埋まりたい。
まさか壱がやってくるなんて、思ってなかったもん。
あぁもう、なんでこのタイミングで会っちゃうかなぁ……。


「……ふふっ」


壱の友達の笑い声が聞こえた。
壱の友達は、ニヤけながらこっち見る。
君たちまで見ないでください。
壱も再びこっちを見て、私の後ろの方に居た疾風の方へ行く。


「……壱、——……」
「……、——」


壱と疾風は何かを話している。
壱は話しながら、何回もこっちをチラ見してきた。
なんで早く帰らないのこの人……!!
今だけは、本当に早く帰ってほしい。


「……っ」


壱から視線を逸らし、正面に居る林田を見た。
が、林田はいつの間にかいなくなっている。
……あれ!?
辺りを見回せば、林田は叶汰と話していた。
いつの間にそっちに……!!


とりあえず頭がパニックになった私は、二年生の靴箱の方に居た優の元へと走った。


「優、優どどどどど」
「落ち着け、依麻」
「だって壱が居るんだもん!! なんでよりによってこのタイミングで来ちゃう!?」


私は優の耳元で、壱に聞こえないようにそう言った。
壱の方を軽くチラ見すると、目が合った。
あぁぁなんでこういうときに……っ!!


「とりあえず、もう一回靴箱の裏行きな!! 誠もそっち歩いてるから!」
「うぉぉぉぉん」
「早く言え、依麻〜!」


頭がパニックです、隊長。


「……」


再び靴箱の裏へ行くと、林田もちょうどやってきた。
林田と再び向き合うと、また気まずい沈黙が走った。


「……一回俺たち、出るべ」


叶汰の呼びかけで、疾風と優と壱とその友達は玄関の外に出た。
……って、なんで壱たちまで!?
早く帰らないの!? テニスラケット持ってるから、テニスあるんだよね!?
はははははっははは早くぶぶぶぶ部活……!!


私の頭の中は、爆発寸前だった。