コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: *叶恋華*Ⅱ β実話β ( No.13 )
- 日時: 2011/07/14 22:08
- 名前: 絵磨 ◆VRtMSlYWsU (ID: PuKarDYu)
- 参照: (゜Д゜)アビョンソ———————————ンッ←
第三話『好きなタイプ』
それから、優とも仲直りをして——。
三年生初めての学校は、あっという間に終わった。
担任は福野のままだし、クラスのメンバーも前と同じなので、特に変わったこともなかった。
壱とも席が離れていたので、接点もない。
また、平凡な日々が幕を開けた。
「——由良、筆箱見せて〜」
「いいけど、喧嘩したときのままだよ」
「いいよいいよ」
そんでもって、放課後。
近くの公園で寄り道をすることにした私と由良は、ブランコに座って雑談をしていた。
そこで私は、由良の缶ケースを見る。
「……」
優と愛奈の名前——……私の名前は消えている。
まぁ、喧嘩した時のままって言ってたしね。
私はそのまま缶ケースの裏を見た。
【大好きな人!
天然でアホな一面が大好き!
クールでシャイでかっこいいよ///】
「……」
よく、壱の性格をわかっていらっしゃること……。
喧嘩前のものだからね、うん。
仕方ない、仕方ないのだ。
私は数秒その文字を見つめた後、何事もなかったように缶ケースを由良に戻した。
「……あ、缶ケースの壱のやつ見ちゃった?」
「ゴメンナサイ」
「依麻カタコトじゃん〜! 今はもう壱の事好きじゃないから、安心してよ!!」
由良は笑いながらそう言った。
私は何度も小さく頷く。
「別に被ってても大丈夫だけどさぁ……。それぞれの恋愛があるし、私は壱と付き合ってる訳じゃないから、どうこういう筋合いはないよ」
それぞれの恋愛。
壱と付き合ってる訳じゃない。
……この二つの単語は、自分で言っておいて自分を虚しくさせた。
「……まぁ、私はもう違う好きな人居るからさ〜。壱は普通の友達」
「なぬ」
「高校生だけどね〜」
「亜夢先輩?」
「まさか! あんな未確認飛行物体、ありえないよ」
「未確認飛行物体て」
あんなに由良と亜夢先輩、ラブラブだったのにねぇ。
なんで別れちゃったのか謎だけど……結構お似合いなカップルだったと思う。
そんなのんきな事を考えていると、
「——あ、そういえばね〜。私がまだ壱の事好きなとき、壱の好きなタイプ聞いた」
「っ!?」
由良の口から、衝撃的な言葉が飛び出した。
私はブランコから降りて、思わず身を乗り出す。
由良はそんな私を見て、小さく笑みを浮かべた。
「知りたい?」
「し、知りたい知りたい!!」
「仕方ない教えてやろう……って、最初から教える気で言ったんだけどね」
由良は冗談を言いながら、爆笑し始める。
しかしやがて真剣な目になり、私の顔を見つめた。
「……まずね、『優しい』『顔が悪くない人』」
『優しい』に『顔が悪くない人』……。
水城、アウトー。
「……他は?」
「んっとねー、なんか意味わかんないこと言ってたんだよね」
「え、何々?」
「『俺のことをずっと好きでいてくれる人』、だってさ」
その由良の言葉に、胸が高鳴った。
壱のことをずっと好きでいてくれる——。
私、優しくもないし顔も可愛くないけど、誰よりも壱の事をずーっと好きでいられる自信あるよ?
これだけは、本当に誰にも負けない。
いくら自分に可能性がなくても、それだけは本当に譲れない。
「あ、あとねー! 引っ張ってくれてSな人」
「……え」
この一言で、一気に顔が引きつった。
引っ張ってくれるって……っ!!
水城、アウトー。
「シャイで消極的だからね、壱」
「で、でも私も引っ張れない」
頑張ってメールしても。
頑張って背伸びしてみても。
何も届かない。
唯一出来る事と言えば——……。
「壱を目で追って、目ぇ合わせることしか出来ないよ? 私」
これしかない。
目で追うことなんて、日常茶飯事だ。
気が付けば、壱の姿を目で追っている。
そしてそれに壱が気づいて目が合えば、どちらかが逸らす。
……まぁ、私から逸らす方が多いけど……。
「……ね、由良は壱と目が合ったらどう?」
「え?」
「壱の事好きな時、一回ぐらいは目が合ったでしょ?」
好きな人がいれば、その人を必ず目で追いかけるはずだ。
それが例え、意識してなくても——。
人間の無意識な行動。
「……まぁ、うん」
由良は軽く頭を掻きながら、頷いた。
私は由良の顔を真剣に見つめ、次の言葉を待つ。
「——なんかね、壱と目が合ったら……。いっつも小さくお辞儀してくる」
「へ」
間抜けな声が出た。
目が合ったら小さくお辞儀……?
お辞儀どころか、逸らされるよ私。
ていうか私から逸らしちゃうよ。
いやいやでも! 私が逸らさないように頑張っても、壱はさりげなく逸らすよ?
何事もなかったかのように、華麗にしなやかに逸らすよ!?
……この違い、なんですか。
「あとね、優に頼んで、壱に『依麻と由良どっちがいい?』って聞いてもらった」
「え」
そ ん な 勝 手 に !!
「……それで壱は、なんて言ってたの?」
「『どっちも』だって」
「え」
またまた間抜けな声が出た。
どっちもって——……。
嬉しいような、悲しいような……複雑な気分。
「んで、『依麻の事どう思う?』っていうのも聞いたよ」
「!?」
急 す ぎ る
「……え、な、なんて言ってたの……?」
「普通」
「え」
「『普通』だって」
「……」
一気に、放心状態になった。
『普通』——。
怜緒に三回目に振られた時も。
壱にバレンタインあげた時も——。
サラッと言われた、この言葉。
恋愛においては私の中で一番嫌な言葉でもあり、一番複雑な心境になる一言。
それを言われると、かなり……。
かなり、ヘコむ。
「大丈夫だ、女子で一番嫌なの依麻じゃないから」
それでも『普通』という事実には変わりない。
由良の慰めは嬉しかったが、少々胸が痛い。
壱と、話せればいいのに。
この関係から抜け出せればいいのに。
やっぱり私は三年生になっても、弱虫のままなのかな——?
自己嫌悪が募り、一気に胸が締め付けられた。