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Re: *叶恋華*Ⅱ β実話β ( No.147 )
日時: 2011/09/26 23:22
名前: 絵磨 ◆VRtMSlYWsU (ID: fnyLTl/6)
参照: 絶賛モヤモヤ週間。

第三十七話『その差、10cm』


「——では、廊下に並べー」


福野の声が響き、生徒たちは一斉に廊下へ出る。
時間が経ち、あっという間に四時間目。
今日の四時間目は、修学旅行に向けてのジャージ集会というものがあった。
名前の通りジャージで集会をして、ジャージを点検する……というものだ。
この学校は特殊だな、なんて思いながらも私は体育館へと向かった。


**


「——じゃあこっちに向かって、二列に並んでください」


先生がマイクを使い、そう言った。
素早く並べるか、という実験みたいなものだろう。
なんでそんな事をするのか、いまいちよくわからないが。
そう思いながらも、体育館いっぱいに居る生徒の人混みの中を、私は歩き始めた。


その時、


「!」


壱が、ちょうど私の前を歩いていた。
気だるけな雰囲気を醸し出している姿。
思わず抱き着きたくなるような、背中。


なんだか無性に堪えきれなくなって——。
私は平然を装った振りをして、さりげなく壱の横を歩いてみた。


「……っ」


横に並んでから、『やってしまった』と少し恥ずかしい気分になった。
だけど、普通に歩いてるだけだからいいよね、うん!!
必死に自分にそう言い聞かせた。


もし——。
もし壱と私が、付き合えたら。
当たり前のように、こんな風に歩けるのかな?
壱の隣に居る事が出来るのかな——……?


152cmと、162cm。
身長差、10cm。
10cmって、結構差があるなぁ……なんて。
初めて横を歩いてみて、そう思った。


体育館の床に映る、壱と私の影。
どうしようもなく愛しくて。
だけど私は『片想い』っていう立場で。
わかってる。
わかっているけれど、その気持ちは自分の胸を締め付けた。