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Re: *叶恋華*Ⅱ β実話β 39.【勘違い≒期待】更新! ( No.180 )
日時: 2012/01/02 22:05
名前: 絵磨 ◆VRtMSlYWsU (ID: qwjQ/00r)
参照: 徐々に復活していくぜ\(^0^)/

第四十六話『修学旅行三日目』


「朝だ、起きろお前等!!」


修学旅行三日目の朝。
部屋中に響くドスの効いた福野の声と共に、私は目を開けた。
窓から差し込む朝日が眩しく、思わずもう一度布団の中へともぐりこんだ。


——そういえば、私いつの間に寝てたんだろう。
ていうか今、何時?
なんで福野が——?


「お前等の部屋が一番最後だよ! もう皆大広間に居るから早く来い!!」


福野は力強く言った後、派手な音を立ててドアを閉めた。
遅れて同じ部屋の女子たちの慌てる声が聞こえ、布団から顔を出した。
……仕方ない、これは準備をするしかなさそうだ。


まだ少し重たい目を擦りながら、ゆっくりと体を起こした。


**


「なんか朝から疲れた……」


私はバス座席に腰を下ろし、由良に向かって呟いた。
由良もうんうんと頷き、小さく溜息を漏らす。
朝からあんなドスの効いた声で起こされて急いで準備をするなんて、疲労が溜まるに決まってる。


そう思ったとき、壱がバスの中に乗り込んできた。
胸がときめくと同時に今日初めて見る壱の姿に、私は思わず見とれてしまう。
すると、ちょうど壱と目が合った。
しかしすぐに逸らされる。
あ、と思った瞬間に、また目が合って——。
再び、逸らされた。


「……うひょ」


これぞ、二度見っていうやつですか。
なんだか恥ずかしくなって俯く。
壱はそのまま歩き続け、私の隣へ。
健吾が来ていないから、また昨日みたいに窓側に行くのかと思いきや——。
そのまま、私の隣に居た。


「——お、壱」


すぐに健吾が乗り込んできて、壱に笑顔で話しかけた。
壱は何かを気づいたかのように、素早く窓側へと向かった。
しかし、


「あ、今日はこっちでいいよ」
「お、いいの!?」


健吾が壱を私の隣へと譲り、自分は窓側の方へと向かった。
健吾が座ると、壱も再び私の隣へと座った。
う、うわぁお……。
また壱の隣だぁぁぁぁ!!


「よかったね、依麻」


由良が小声で小さく呟き、私は頷いた。
今日は朝からついてる。


今日は修学旅行最終日。
全力で楽しもう!!


**


「——ここでお願いごとをすると叶うという——……」


バスを降り、お寺のお参りへ。
案内役の人の説明をぼんやりと聞きながら、小さく欠伸をしていた。


「では、実際に皆さんにもお願いごとをしてもらいます。二列に並んで下さい」


そう言われ、生徒はぞろぞろと並びだす。
私も遅れつつも列に並び、願い事の順番が来るまで待っていた。


願い事、願い事——。
そりゃあ、もちろん決まってるっしょ。


「(壱と付き合えますように)」


私はその願いを、心の中で何度も唱えた。
壱は、何を願ったのかな。
ドキドキする気持ちを抑え、次の目的地——和歌山城へと向かった。


**


和歌山城に着くと、それぞれ各自自由時間だった。
写真を撮って展示物を見る以外特に何もすることがなく、由良に貸してもらった扇子で自身の顔を仰いで椅子に座っていた。


「——依麻、もうそろそろ集合時間だから和歌山城前に行こう」
「あ、まじ? 了解」


由良に引っ張られ、私は階段を降りる。
その降りるとき、ちょうど壱が私の横に居た。
前も詰まっていたため、横に居る壱と急接近。
や、やばい。


調子に乗った私は、更に壱の方へと近づいた。
しかし、壱は避けない。
私の隣で黙っている。
やばいやばいう、うわわわわ……っ
横を見れば壱のかっこいい横顔だし、下を見れば壱のおしゃれな靴だし……わぁぁぁぁ!!


心臓が爆発しそうになりながらも、階段を降りていた。

















その後も、バスの中で伝言ゲームをして壱と顔が近くなったり——。
距離が極端に近くなったり、バスのテレビの中で変な怪談のビデオを見た時も近くなったりした。
健吾が「壱見づらいんじゃない?」と言うと、


「こっからが見やすいんだもん」


とサラッと呟き、私の方へと体を傾けた。
私はビデオどころじゃなく、無駄にテンションが上がりながら空港に着くまでの間、ずっとドキドキしっぱなしだった。


**


あっという間空港に着き、解散式。
北海道はやっぱり関西よりは寒い。
夕方の空の色を見つめて、なんだか寂しくなりながらも、先生が話している間に思い出を振り返っていた。


壱とバスで隣になったこと。
壱と隣になって急接近することが多かったこと。
壱と目が合ったこと——。


頭の中に思いつくことは、壱の事しかなかった。
これで少しでも距離が縮まればいいなぁ……なんて。


中学校生活の中の一番の大イベント。
修学旅行、いい思い出が作れて楽しかった!!