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- Re: *叶恋華*Ⅱ β実話β ( No.187 )
- 日時: 2012/01/06 00:27
- 名前: 絵磨 ◆VRtMSlYWsU (ID: RGrKDPzX)
- 参照: ただ好きなだけじゃ、駄目なんだね。
第四十八話『欲張りな可能性』
人生、何事もうまくいかない。
そう、うまくいかないに決まってる。
だからこそ、何かに思い切りぶち当たらなきゃいけない。
当たって砕けろ精神だね、うん。
次の日——。
やっぱり今日も、壱の方を見ても目が合わず。
ただひたすら、壱の背中を見つめている水城です。
「壱、中体連出るんでしょ?」
「あ?」
「中体連」
「あぁ……。——ん、そうだよ」
龍に話しかけられた壱は、笑みを浮かべてそう呟いた。
龍は壱の頭を触りながら、顔を覗き込むようにして笑った。
「壱、誰とペア?」
「えとね、最初がやでぇ〜、最後がきで終わる」
「は?」
「だからぁ〜、最初がぁ」
壱は語尾を伸ばしつつも、龍に説明している。
しかし龍は、小さい目を更に点にして口を開けていた。
「あ、じゃあね、やっぱ……最初がもで、い」
「は?」
「もでい」
「もでい?」
「も、と、い!!」
壱はなんか変な発音でそう言いながら、龍を見つめた。
龍はしばらく考えた後、
「……俺?」
「違う」
「ヒント」
「も……んぐぁい」
「おい、モロ俺だべ」
楽しそうに友達と話す姿。
そりゃあ私の方見てくれないのなんて……わかってるけどさ。
でも私だって、期待しちゃうじゃん。
「……」
夢、みたいだった。
——夢……だったのかな?
林田からの告白。
そこにたまたま壱が居たこと。
修学旅行前の龍や健吾、壱たちの態度。
バスでの隣。
修学旅行での出来事——……。
……全部、これで運を使い果たしちゃったのかな。
ゴールデンウイーク明けから、修学旅行までが一番ツイてた気がする。
前ならば、壱と同じ教室にいれるだけで幸せだった。
壱の姿を見れるだけで、よかった。
なのに今じゃ、目が合わないと駄目。
何かいいことがないと、駄目になっちゃうんだ。
欲張り、だよね。
神様。
どうか、お願いします。
散々期待させたのなら、私をいい方向に導いてください。
欲張りで我儘な私には、神様が味方してくれないのなんてわかってる。
だけど少しくらい、可能性に賭けたっていいよね?