コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

Re: *叶恋華*Ⅱ β実話β  ( No.192 )
日時: 2012/02/08 22:15
名前: 絵磨 ◆VRtMSlYWsU (ID: 5f84h5.J)

第五十話『無意識』


次の日——。
なんだか心機一転したくて、髪の毛を切った。
いや、切ったと言ってもまだロングだけど。
前よりも軽くなった髪の毛を揺らすが、誰も気づかず。
壱との進展もなく、平凡に時間が過ぎて行った。


そして、その日の放課後。
目はやっぱり、壱の姿を探していた。
明日は連休で学校休みだし、月曜日まで会えないから——。
無理矢理でもいいから、壱と目が合いたい。
昨日の出来事で自惚れてしまっている自分がいるが、どうしても。
どうしても、目が合いたかった。
少しでもいいから、進展が欲しい。


そう思い、必死に目を泳がせるが——。
壱は、教室にも廊下にもどこにもいなかった。
え、どういうこと。
帰っちゃった? え? 帰るの早くない!?


「——依麻〜。由良と優掃除だし、廊下待ってよ〜」
「え、あ」


突然現れたまなに引っ張られ、私は戸惑いながらまなを見ようと振り返った。
そう、ちょうど振り返った時だ。
壱と龍が、私の後ろから歩いてきた。


「……っ」


今日はテニス部の人といないから、部活行かないのかな。
そんな事を考えながら——。
いざ姿を見るとなると、凄くドキドキした。


「……」


そのまま、無言ですれ違う。
壱がこっちを向いてた気がするけど、私の身長じゃ顔をあげなきゃ壱の顔が見えない。
身長差、十センチ……。
壱の肩ぐらいに、私の頭がある。


すれ違うには少し近い距離に、
凄くドキドキ……した。


すれ違ったあと、私は小さく息をついた。
無意識に息を止めていたみたいで、少しだけ胸が苦しい。
上がる心拍数と波打つ心臓の音を抑えながら、すれ違った壱と龍の背中を見る。
二人とも、一歩ずつ遠ざかっていく。


行っちゃう——。


そう思ったときに、もう私の体は動いていた。
気が付けば私は廊下から教室に向かい、優と由良に向かって叫んでいた。


「先、玄関行って待ってるね!!」


教室に居た人たちの注目を浴びながらも、私は優と由良を見た。
優と由良は軽く驚きながらも、


「「うん!!」」


多少ズレがあったが、二人はほぼ同時に同じ返事をした。
私は二人に向かって手を振り、廊下を見る。
前には、まだ壱と龍の姿が小さく見えていた。


——急げば、追いつけるはずだ。


そう考えるより前に、私の足は無意識に動き出していた。