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- Re: *叶恋華*Ⅱ β実話β ( No.196 )
- 日時: 2012/02/15 20:42
- 名前: 絵磨 ◆VRtMSlYWsU (ID: RWarW6Jx)
第五十一話『加速』
走る、走る走る。
遠い君の背中に向かって、ただひたすら走った。
君との距離をうめるように、君に少しでも近づけるように。
ただただ、追いかけた。
壱と龍が曲がり角で曲がり、私は更に走るスピードをあげた。
早く、早く早く。
がむしゃらに足を動かして、勢いよく玄関に入る。
そこで、私の短くなった髪が風に揺れると同時に——。
靴を履いている、壱と龍が視界に入った。
……よかった、間に合ったぁ……。
そう思いながら安著の溜息をつくと、
「……っ、」
——壱と、目が合った。
壱は黙ってじっとこちらを見ている。
何故か逸らすに逸らせられなくて、私も壱を見つめる。
すると、
「!?」
壱が手で口を隠し、目を逸らした。
ちょうど光の反射でどんな表情してるのか見えなかったけれど——……!!
今の反応、何!?
手で口を隠して逸らすって、よく漫画とかで照れてる時に使われる効果じゃ——……!?
いやいや、落ち着け水城。
壱が照れてる訳がない!!
でも漫画である仕草、実際にやってる人見るの初めてだよ……っ!!
色んな意味で慌てていると、壱の反応に気付いた龍が壱を見た。
壱は口を抑えながら龍に顔を寄せ、何か呟く。
それと同時に、龍がこっちを見た。
「っ!!」
龍にバレちゃあかん!!
私は慌てて壱と龍に背を向けた。
壱を見つめてた事とかバレたら……恥ずかしすぎる。
いや、今に始まったことではないんだけどさ。
多分もうとっくに龍は気付いてるんだろうけど……ね。
「……」
——もう、いいかな……?
そう思いながら、ゆっくりと振り向く。
壱と龍は歩きだし、壱が笑みを浮かべているのが目に入った。
しかし、壱だけ軽くこっちを振り返り、再び目が合う。
が——。
その瞬間、龍もこっちをみた。
「!?」
目が合うと同時に二人は足を止め、私を見る。
私は慌てて、再び背中を向けた。
「——あ、居た依麻〜」
「——よぉ〜っ!」
そこでちょうど、まなの声と龍の声が被る。
龍の声はよく聴こえなくて、中途半端にしか聴こえなかったけど。
「……あー……」
その場で立ち尽くし、壱と龍を見る。
二人は再び歩きだしていて、こちらに背中を向けていた。
かっこいい……なぁ。
光の反射でキラキラと光る玄関を見つめ、改めて壱の事が好きだと深く思った。