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Re: *叶恋華*Ⅱ β実話β  ( No.204 )
日時: 2012/02/29 00:01
名前: 絵磨 ◆VRtMSlYWsU (ID: biELAV5.)
参照: 学年閉鎖いぇえええええああああ!!←

第五十四話『Start!!』


そして、次の日から本格的に体育祭練習が始まった。
なんとか朝練は気合と根性で参加することは出来たが、その場に壱はいなかった。
壱もどちらかと言えば寝起き悪そうな感じだし、寝坊したんだな。
勝手にそう解釈し、やる気が少し衰えながらも練習に集中した。


——まぁ、クラス対抗大縄練習で二回とも全部私が引っかかったのは言うまでもない。


**


そんなこんだで朝練から今までクラスメートからのブーイングと冷たい目線を受けながら、なんとかここまでの時間を過ごしてきた。


そして、現在の体育の授業に至る。


体育祭の全体練習の為、三年生全員がグラウンドに出されているのだ。
今日やる練習は、朝にもやったクラス対抗大縄跳びとリレーだ。
リレーも全員参加で、決められた……いや、いつの間にか決められていた隊形で並ぶ。
その時は全員必ず指定Tシャツ着用、短パン着用という謎な決まりがある。
まぁ確かにTシャツと短パンの方が動きやすいけどさぁ……。
白って、透けるんだよ。うん。
男子諸君にはわからないこの女子の気持ち、わかるかい?
指定Tシャツを着る為に、このクソ暑い中もう一枚中に着なきゃいけないんだぜ?


……まぁ、見ればほとんどの女子がお構いなく可愛らしい下着が透けていらっしゃるのですが。


これ以上女子を見ているとなんだか自分が変態っぽくなりそうなので、男子の方を見る。
壱の指定Tシャツに短パン姿が目に入り、思わず見とれてしまう。
本当スタイルいいなぁ……。かっこいい。
男子なのに女子の私より足細いってさ、凄いよね。
壱の足を見て、自分の足に視線を向け……大きく溜息。
比べるもんじゃあない、うん。現実逃避。


そう思いながらももう一度壱を見ると、龍がこっちを見た。


「!」


私は反射的に、慌てて顔を下に向ける。
あ、危ない……。
壱に見とれていたのを龍に見られたら、何言われるか溜まったもんじゃない。


ていうか、最近龍に監視されてる気がするのは気のせい?
位置を見てると、必ず龍が振り向いてくるんだけど——……。


さては、エスパー?


「——……ねぇ、これ依麻に——」


そんな時、まなの声が聞こえた。
まなの姿を探そうと目線を動かすとちょうど由良と目が合い、由良が小走りでやってきた。



「依麻」
「ん?」


由良は私の腕に無理矢理はめるように、髪を縛るゴムを渡してきた。
……これは確か、朝練の時にまなに貸した私のゴムでは……?


そう思った瞬間に、由良が私の耳元に唇をそっと近づけてきた。
























「それ、壱から」




























「!?」


え、え、え?
頭の中が混乱するのと同時に、リレー開始のピストルが鳴った。
周りが一気に歓声で騒がしくなり、私は茫然とその場に立ち尽くす。


壱からって、どういう——……?


思考回路が混乱している間、リレーは進んでいく。
あっという間に壱の番が来て、壱が走り始めた。
私は慌てて我に返り、壱に見とれる。


……やば。
前髪が風に靡いててもかっこいいって、どういうことなの。


壱の次に由良が走り、由良は一気に二人を抜かした。
さすが足の速い姉さんだ。
由良が走り終わり、足が速い人の連続疾走が続き——。
私の番が来た。


由良と足の速い人たちのおかげで、抜かされる心配もなく楽に走ることが出来た。
次の人にバトンを渡し、その次の人にバトンを渡し——。
アンカーへとたどり着き、二組はぶっちぎりの一位を取ることが出来た。


「よっしゃー!」


クラスメートが喜びの歓声を上げる中、私は由良の姿を探していた。
さっきの言葉、どういう意味なんだ?


「……由良!」


由良を見つけ、小走りで駆け寄った。
由良は胸元をパタパタと仰ぎながら、私を見る。


「どした、依麻?」
「ゴ、ゴムのやつ、壱、なんで、」
「まなから壱にまわってきたから」


え?
状況がよく理解できないんですが——。
とりあえず、落ち着け自分。


「い、壱、なんか言ってた?」
「『これ、水城』って」
「みっ、水城!?」


壱、私の苗字ちゃんと覚えてくれたんだね……!!
本当は『依麻』って名前で呼んで欲しいけど、この際苗字でも許す。
だって嬉しすぎるしっ!!


壱に『水城』と呼ばれる日が来るとは——……。
世の中、一体何が起こるか本当にわかったもんじゃない。