コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: *叶恋華*Ⅱ β実話β ( No.221 )
- 日時: 2012/03/30 04:51
- 名前: 絵磨 ◆VRtMSlYWsU (ID: UXIe.98c)
- 参照: 些細な事でも幸せ。
第五十九話『噂』
「——ねぇ壱、今日も?」
休み時間、そう呟いた志保ちゃんの声が耳に入り込んできた。
——もしや、昨日のこと?
過剰に反応してしまい、思わず耳を傾けた。
「……したくないのに、無理矢理とか嫌じゃない?」
志保ちゃんの声が、やたら大きく聞こえる。
絶対昨日の事だろ、うん。
「——なの?」
「……や、」
「でしょ?」
志保ちゃんと、微かに聞こえる壱の会話。
『好きなの?』って、聴こえた気がする。
「——嫌だよね」
志保ちゃんのその言葉で、会話は終了したのか何も聞こえなくなった。
……なんなんだ。
絶対私の事だと思うけど、凄く気になる。
こうなったら、知ってそうな人に事情聴取だな。
私は自分の席から立ち上がった。
「——……え、何も聞いてないよ」
愛奈はそう言い、きょとんとした顔をこちらに向けた。
女子トイレで愛奈に事情聴取するが、何も知らないらしい。
「まじかぁ……。うーん、どうしようかなぁ……」
どうしても気になる。
でも他に知ってそうな人、いるかなぁ……?
そう思いながら頭の中で考えていると、
「お、依麻と愛奈じゃん」
明るい声が聞こえてきた。
振り返れば、まなが笑みを浮かべている。
相変わらず、彼女は元気だ。
「……あ、そういえば依麻」
「ん? まな、何?」
「一組で今、依麻と壱が付き合ってるって噂流れてるよ」
「ふーん。……は!?」
新 事 実 発 覚
なんだその噂!!
意味わからん、実に意味わからん!!
「誰が言ってたの、それ」
「私のクラスのテニス部の女子」
テ ニ ス 部 だ と !?
壱と一番関わりあるじゃん!!
でも——……。
「なんでそのテニス部の女子が? 壱が広めた訳でもないのに……」
そう、そこが問題点だ。
壱が自分から『昨日水城とこんなことがあった』なんて暴露するはずがない。
ましてや、女子に対して何て——……。
「私もそれ気になった訳。だから聞いたんだよね、その女子に。そうしたっけその子、『志保に聞いた』って言ってた」
「……え、」
志保って、あの志保ちゃん?
「……でも志保って、昨日のやり取り見てたっけって思って」
まなはそう言い、腕を組んだ。
昨日のやり取り……。
「見て……なくない? 多分……」
私は恐る恐る呟いた。
うん、見てないはず。
だって志保ちゃん、普段速攻で帰宅するし。
残ってた生徒も大分少なかったし——……。
そこで、愛奈が口を開いた。
「……いや、見てたかも……」
一気に、沈黙が流れた。
まぁ昨日、あれだけ声でかかったし——……。
確実ではないけど、見られてた可能性だって十分にある。
「とりあえずなんかよくわかんないけど、私がテニス部の女子に付き合ってないって言っといたから。なんかあったら、依麻から立派な片想いだって言ってやれ!」
まなはそういい、ガッズポーズを向けた。
片想い——。
紛れもない事実だが、やっぱり胸が痛む。
噂が流れても、結局片想いのまま。
そう考えると、少しだけ目の奥が熱くなった。