コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: *叶恋華*Ⅱ β実話β ( No.225 )
- 日時: 2012/04/19 19:12
- 名前: 絵磨 ◆VRtMSlYWsU (ID: 83yASpp9)
- 参照: 何もかも逃れようのない現実。
第六十話『雨模様heart』
六月も気が付けばあっという間に終盤に入り、体育祭への日付がどんどん進んでいった。
そんな体育祭練習最後でもある今日の天気は、あいにくの雨。
なんだか私の心も、雨模様。
暗い空を見ていると、尚更気分が暗くなる。
「依麻、元気出せー」
優と由良にそう言われるが、あいにく元気は出ない。
そうすぐに晴れるもんじゃないぜ、このモヤモヤは。
あーあ、もう。
壱は相変わらず、なんだか冷たい感じがする。
目が合った? と思っていても、壱はすぐに逸らす。
壱と距離が近くなると、壱は冷たい表情で去っていく。
「タテホタテホ」
ほら、今も。
意味の解らない言葉を発しながら、私の方なんかを見ないで何処かへ行く。
——やっぱ、避けられてるのかな。
ここまで避けられてると……なんだか、泣きそうになる。
**
「——じゃあ、日曜日の体育祭に向けて、椅子にテープを貼れー」
まなは何故か怒っているし、壱は私を避けている。
相変わらずの暗い気分で時間は進み、帰りの会。
福野がそう指示をし、テープを配った。
椅子にぐるぐるとテープを巻き付ける。
四本全てに巻き終わると、顔を上げて無意識に壱の方を見てしまった。
——……あ、目が合った。
こうして壱の顔を見てしまうと、泣きそうになる。
気まずい気持ちなどが色々ごちゃまぜになり、視界がぼやける。
私は素早く目を逸らした。
……何、やってんだろう。
また、避けてしまった。
逃げてしまった。
**
帰りの会が終わり、放課後。
私はカバン片手に玄関へ向かい、真っ先に壱の靴箱を目で探す。
帰りの会で、居残りの生徒で私の名前が呼ばれた。
それと同じく、壱の名前も呼ばれていた。
だから、きっと上靴がいるはず。
それでも帰っていたら——。
微かな期待をこめ、靴箱を見る。
……外靴が、ない。
あるのは指定の上靴だけ。
帰ってる。
やっぱり、私の事避けてるのかな……?
一緒に居残りするのも、同じ教室にいる事さえも嫌なのかな。
私、最低だ。
「……っ」
目頭が一気に熱くなる。
いけない。
慌てて目を擦る。
今は学校に居たくない。
その一心で、飛び出すように外へ出た。
「……あれ、依麻?」
学校が見えなくなるところまで走っていると、歩いていた愛奈に引き留められた。
私は少し戸惑いながらも足を止め、振り返る。
「……愛奈……」
「一人? 急いでる?」
「……いや、特に……」
「なら、一緒に帰るか?」
愛奈は、人懐こい笑みを浮かべる。
私は数秒黙った後、ゆっくりと頷いた。