コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: *叶恋華*Ⅱ β実話β ( No.232 )
- 日時: 2012/04/22 23:33
- 名前: 絵磨 ◆VRtMSlYWsU (ID: dCFCK11c)
- 参照: らんらんらん
+番外編+ 『日常』
※優目線です
※優の話を聞いた話を元に書いています
私、宮田優は小学生時代、男子と絡むことが多かった。
女子と居ると疲れる事が多かった、小学校六年生時代。
同じクラスだった男子——かっくんこと沢木克己、永井晃、そして——……珠紀壱は私と仲良くしてくれた。
かっくんは、優しいし普通にいい奴。
も、面白いし優しいし、眼鏡がよく似合っている。
そして壱は——……。
「……ねぇ壱、あのさー」
「……」
「壱?」
「……」
THE・無表情、無関心、無反応、無愛想、無口野郎だった。
『無』の要素がこんなに何個もつく人間は、珍しいと思う。
あんまり人と関わろうとしないし、六年二組では浮いてる存在となっている。
「——ねぇちょっと、大丈夫!?」
「……あぁ」
あまりに無口なので心配して肩を揺すると、やっと一言。
素っ気ない返事をしてくれた。
……まぁ、こんな奴でも私と仲良くしてくれていた。
うん、普通に仲良かった、はず。
かっくんや晃とは離れたけど、壱とは今でも同じクラスだ。
そして壱は、中学二年生になってから転校してきた友達——水城依麻の好きな人でもある。
依麻はなかなか行動に移せない駄目な奴でもあるけど、なんだかんだ言ってずっと壱を好きでいるみたいだ。
それに対し壱は、全く持って恋愛に興味ない奴だ。
中学校に入って突然かっこよくなり始めたし、急に痩せたし、いっちょ前にワックスつけ始めるし、昔よりは喋るようになって『無』も消えたし、そこそこモテる方だと思う。
まぁ、昔の面影もちゃんと残ってるけどね。
だけど、コイツは恐ろしいほど恋愛に無関心。本当に。
……あ、『無』がまだ消えてないな。
ホモ中の子から何回も告白されてるみたいだけど、全部断ってるみたいだし——。
たまに『彼女欲しい』とかほざいてるけど——……。
ならOKしろよ!! ……なんてツッコミもしたくなる。
まぁ、壱がホイホイとホモ中の子の告白をOKしてたら、依麻がどんな顔するか想像つくからしないけどさ。
でも、本当にコイツは。
頭の中『ゲーム』って単語しかないんじゃないかって位に、恋愛に興味がなかったりする。
それほど、ゲーム好きだ。
「——ねぇ、優」
「んー? 何、晃」
「今日、かっくんと俺で壱の家行くんだけどさー。優も来ない?」
「いいの? 行く行く!!」
晃に誘われた私は、大喜びで返事をした。
だって、十二歳の私は——……。
晃と、付き合ってたんだから。
「じゃあ今日、優も俺たちと一緒に帰ろ」
「いいよ〜」
「かっくんと壱には、俺から言っとくからさ」
「ありがとう、晃!」
晃は、本当に優しかった。
私が居ても嫌な顔しないで普通に接してくれる、かっくんと壱も優しいけれど。
単純に、この三人の傍に居れて嬉しかった。
**
放課後。
私達四人は、チャイムが鳴ると同時にすぐに学校を飛び出した。
そしていつもの並木道を歩く。
当時胸辺りまで長かった髪と、斜めに緩く分けていた前髪が風に揺れ、くすぐったく感じながらも、皆で楽しく会話をしていた。
学校から結構距離がある壱の家だけど、皆でお喋りしてればあっという間に壱の家についた。
壱は無言でカバンから鍵を取り出し、慣れた手つきでドアを開けた。
「——いいよ、入って」
「お邪魔しまーす」
「壱の家の玄関、やっぱ狭いよな」
「優、先入れ。お前細いし素早く入れるだろ」
「え、ちょ……っ」
壱の家の玄関は、十二歳の少年少女ぎゅうぎゅうになる狭さであった。
なので一人ずついかないと、前に進めなかった。
「壱、おかえり。——かっくん、晃、優ちゃん、いらっしゃい」
「「「こんにちはー」」」
玄関を突き進むと、リビングには壱のお母さんが居た。
壱のお母さんは髪が長くて、凄くサラサラで——……。
密かに、私の憧れでもあった。
サラサラな髪の母親から生まれた息子、壱はどっちかっていうと癖毛だけどね。なんでかわからんけど。
「ただいまー。……よし、皆。ゲームやるぞ」
壱は素っ気ない口調でそう言い、自分の部屋へと早足で向かっていった。
その壱の言葉が、私たちの始まりの合図だ。
「「「うぉらああああああああああああ!!!!」」」
壱より先に壱の部屋に飛び込み、ゲームのコントローラーを握る。
後から壱が無表情でやってきて、ドアを閉める。
そしてまた無表情で、何処からかお菓子を取り出す。
それを適当にテーブルの上に置き、私達は蟻のように群がる。
壱はお菓子を口に入れて、散らかった床からテレビのリモコンを探してテレビの電源をつけた。
私達はお菓子から手を離し、再びコントローラーを握る。
「……んじゃー、何やりたい?」
「俺ね俺ね、これやりたい!」
「かっくん、それ皆で出来ないって! なぁ、優」
「晃の言う通りー。皆で出来る奴にしよ! ——壱、何がおすすめ?」
「適当に選んで」
さすが無表情、無関心、無反応、無愛想、無口野郎。
私は少し口を尖らせ、勝手に壱の部屋のゲームのカセットをあさることにした。
「私壊すかもしれないけど、いーの? 私に選ばせて」
「……あぁ」
出た、壱のありきたりの返事。
私は小さく溜息をつきながら、晃とかっくんとゲームカセットをいじりだした。
毎日のように壱の家に行き、毎日違うゲームをする。
そして騒ぎまくって、日が暮れたら家へ帰る。
それが私達四人の、日常でもあった。