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- Re: *叶恋華*Ⅱ β実話β ( No.233 )
- 日時: 2012/04/22 23:35
- 名前: 絵磨 ◆VRtMSlYWsU (ID: dCFCK11c)
- 参照: らんらんらん
第六十五話『七月七日』
目も合わず、何も進展もなく——。
平凡な時間の中で優に聞いたのは、小学生時代の壱のこと。
それを聞いて、なんだか嬉しくなった私だけど——。
同時に、やっぱり現実は厳しいものだと痛感する。
そんな今日は、七月七日。
毎年思い出す、この七夕の日。
——怜緒と愛可が、両想いになった日。
**
最近、特に何もない同じような日常が繰り返されている気がする。
うん、今日も何もないまま放課後を迎えているね。
そんな事を思いながら教室掃除をしていると、どこからか視線を感じた。
ふと顔を上げると、壱がすぐ目の前に居た。
「……っ!?」
思わず立ち上がって一歩後ろに下がり、再び壱の顔を見た。
壱は顔背け、何処かへ行ってしまう。
……幻、覚?
脳みそが甘い妄想をしすぎて、とうとう爆発したのか。
私は自分の頭を疑いながら、去っていく壱の背中を見つめていた。
その時、
「壱掃除じゃないでしょ? なんで居んの」
福野が壱を引き留め、壱は振り返った。
壱は苦笑いをし、福野を見る。
「あ、いや……。もう出ます」
「あんた、テニス部のミーティングあるんでしょ? 早く行けよ」
「今から行きます」
「誰か待ってるの?」
「や、誰も待ってなんかいません!!」
壱は手を横に振り、一歩後退りをした。
しかし福野は鋭い目つきで、壱を睨んでいる。
「じゃあなんでここにいるの。誰待ってるのさ」
「だから誰も待ってないですって」
「じゃあなにしてんの?」
「や、辞書を……」
壱は片手に持っている鞄に視線を向け、そう言った。
「辞書?」
「辞書しまおうとしてただけ!!」
「なら早く辞書しまえや!!」
「あー、もうしまったし。だからこれから教室出るんだよ!!」
ちょ、壱のキレ口調……っ!!
滅多に聞かないそれは、なんだかかっこよく感じる。
声が低くなって、少し早口で——。
だ け ど 怖 い
「ならさっさと出てけ!!」
福野は逆ギレをし、壱を追い払った。
壱は福野の方を見ず、すぐに教室を後にした。
……あーあ……。
私は動きを止め、しばらく立ち尽くしていた。
なんか久しぶりに、刺激を感じた気が……する。
少しだけ懐かしいその感覚に、よくわからないけれど、なんだか少しだけ嬉しくなった気がした。