コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: *叶恋華*Ⅱ β実話β ( No.44 )
- 日時: 2011/07/26 23:08
- 名前: 絵磨 ◆VRtMSlYWsU (ID: Fas9i7dG)
- 参照: こんな人生寂しいです(by.BadBye
第十話『隣の席の』
休み時間。
私はのそのそと、窓側の一番後ろの席——……。
愛奈の席へと、足を進めていた。
「あーいなー」
「お、依麻」
笑みを浮かべながら近づき、空いている愛奈の隣の席の前に立つ。
確か愛奈の隣は——……龍、だっけ。
姿が見えない龍を目で探すと、龍は壱と健吾と久しぶりに学校に来ていた糸田と黒板の方で話している。
「——ねぇ、依麻。この課題やった?」
「課題? ……あ、やべ」
「放課後までだから、今やれば間に合うよ」
「お、なら授業中やろう」
「こら」
戻ってくる気配もなさそうだったので、私はお構いなしに龍の席の前で愛奈と話していた。
しかし、
「どいてー」
戻ってくる気配がなさそうだった龍が、いきなりこちらに向かって歩み寄ってきた。
180cmに近い龍の身長は、152cmの私が見上げると少々首が痛い。
28cm差? ……笑えないね、チクショー。
「あ、ごめん」
とりあえず龍が戻ってきたので、私は素早く避けた。
それと同時に愛奈も立つ。
愛奈と向かい合う形にする為、私は窓に寄り掛かることにした。
その時、
「……あ゛————ンッ!! ヴゥッウーン! ンー」
龍が突然、大声で変な咳ばらいし始めた。
龍、なした。
私と愛奈は顔を見合わせ、笑いを堪える。
「壱ー。こっち来ーいー」
龍は変な咳払いを止めた後、黒板の方に居る壱に小さく手招きをした。
壱はこっちを見るが、横に居る糸田と健吾が気がかりな様子でなかなか動かない。
それに気づいた龍は、
「健吾と疾風もこっち来てー」
そう言って、今度は両手で大きく手招きをした。
壱はゆっくり近付いて来て、後から呼ばれた糸田と健吾も龍の元へ来る。
すると龍は怪しげな笑みを浮かべ、愛奈の席に指を差した。
「壱ここ座ってー。んっふ」
『んっふ』って。
「……や、」
壱は軽く笑みを浮かべて小さく呟き、龍の右隣の男子の席に座った。
龍も笑みを浮かべて「なんだよー」と軽く文句を呟きながらも、すぐに糸田へと視線を変えた。
「……じゃあ糸田、ここ座って」
「やだー。高見の席とかケツ汚れるしょ」
「ちょ、ひっど」
始まりました、糸田VS愛奈の戦い。
糸田と愛奈は、俗に言う犬猿の仲だ。
愛奈は「チビでデブでウザイ奴!!」なんて言ってるけれど、糸田の方は不明。
「ガングロたまごちゃん」など愛奈を馬鹿にしているが、疾風たちの間では『糸田って絶対高見の事好きだよな』と噂されている。
それは愛奈も糸田も、知らない話だが。
「——愛奈ー、依麻、こっちきてー」
不意に由良に呼ばれ、私と愛奈は由良の元へと向かった。
せっかく壱が近くに居たので、もっと愛奈の席に居たい——なんて気持ちもあったが……。
席替えしたばっかりだけど、最近、壱はこっちの席の近くに来る事が多い。
そりゃあ、龍が居るからだと思うけど。
ちょうど龍の隣が愛奈なので、私も近くに居れる。
愛奈とも話せるし、壱を近くで見れる。
実に一石二鳥だと思う。
私にとっては……だけどね。