コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: *叶恋華*Ⅱ β実話β ( No.51 )
- 日時: 2011/07/29 00:21
- 名前: 絵磨 ◆VRtMSlYWsU (ID: 5p/ciDZ4)
- 参照: こんな人生寂しいです(by.BadBye
第十二話『梅雨の朝』
四月に入ってから、久々の雨の日。
水城依麻、十四歳。
只今、がむしゃらに走ってます。
遅刻は日常茶飯事のようなものだが、一応私も中学三年生。
受験生と言う重たい身分でもあるし、遅刻をしないように精一杯走っていた。
しかも今年来た副担任の先生、遅刻に超厳しいんだよなぁ……。
担任の福野とダブルパンチで怒られたら、たまったもんじゃない!
そう思っていると、遠くから何やら叫んでるような声が聞こえてきた。
「——ちゃん! お姉ちゃん! そこのおねーちゃん!! おね—————ちゃん!!」
どんどん近づいてくる、その声。
辺りを見回せば、お姉ちゃんらしき人は誰も居ないし——……。
……もしかして、私?
足を止めて振り返ると、紫色という珍しい頭をした厚化粧のおばさんが、こっちを見てゴミ袋を振り回していた。
……誰? what?
「雨降ってるから濡れちゃうでしょ」
「え、は……あー」
茫然とそのおばさんを見ながら、私は立ち尽くしていた。
誰、誰なのこの人は!!
「今、傘あげるから!」
「え、あ、だ、大丈夫ですよ」
そんな見ず知らずの人からもらうなんて、滅相もございません!
遠慮をしたがおばさんは聞いてくれず、両手にゴミ袋と透明のビニール傘というオプション付きで私の横へ来た。
——もしかしてそれ、捨てようと思ってた傘じゃ……?
「はい、お姉ちゃん! 使って! 濡れちゃうから」
「……あ、あ、ありがとうございます……」
今更傘使っても、もう遅い気がするんだけどな。
私の髪からは、水が滴っている。
だけど、せっかくのおばさんの親切。
断るわけにもいかず、私はとりあえずそれを受け取り、傘を開いてみた。
しかし——……。
「……」
穴 空 い て る や ん け
「——あら、穴空いてるわね〜。ごめんねぇ、使い終わったら捨てて」
「……いや、大丈夫ですよ」
何が大丈夫なんだ、自分。
ていうかこんなギャグみたいな事、本当に起こるんだ……。
そう思いながら、私は穴の開いた傘を茫然と見つめ、空を見上げた。
一向に止む気配のない、天気。
穴から水出てきてますよ、この傘。
私は苦笑いを浮かべてから、おばさんを見つめた。
おばさんはにこにこ微笑んでいるので、私もなるべく笑顔を浮かべるのを心がける。
「——じゃあ行きますんで……。傘、ありがとうございます」
「気を付けてねー」
小さく頭を下げ、私は歩き出した。
……なんだったんだ。
そして、誰だったんだ……。
まぁとりあえず、穴空いてるけど傘を貸してもらって感謝。
しかし——。
これはもう、遅刻決定ですな。
私は走るのを諦め、ゆっくりと歩きながら学校へ行った。