コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: *叶恋華*Ⅱ β実話β ( No.52 )
- 日時: 2011/07/29 00:25
- 名前: 絵磨 ◆VRtMSlYWsU (ID: 5p/ciDZ4)
- 参照: こんな人生寂しいです(by.BadBye
第十三話『天下一品の発言』
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「閉めるぞー閉めるぞ閉めるぞー」
「うわわわわ」
校門の前に行くと、社会の先生がそう言いながらドアをゆっくりと閉めていった。
私は慌てて走り、ドアに挟まる勢いで中に入る。
「……はーっ……。——あ……」
大きく息を吐くと、先に玄関に居た中条と目が合った。
中条も遅刻か……。
よかった、遅刻してるの一人じゃなくて——なんて軽い安心感が心の中に浮かぶ。
私と中条は遅刻常習者なので、すっかり福野に目をつけられている。
中条なんて、福野に呼び出しされてややしばらく説教されていた。
しかしマイペースな中条は、『すイませーン』と何故かカタコトな日本語でサラリと謝ってその場から逃れるので、さほど怒られることは気にしてないみたいだ。
今だって、靴箱の前に座ってくつろいでいる。
さすが、マイペース。
「お前等遅いぞー」
「すいません! いやぁ〜、家が遠いもんで……」
私は頬に張り付く濡れた髪の毛をかき分けながら、苦笑いを浮かべる。
しかし先生にそれはきかず、
「先生だって、刹那から毎朝通ってるんだぞ」
「……うへ」
あっさりそう返された。
「……どうせ車じゃん……」
そこで横に居た中条が、小さな声で呟いた。
中条、ナイス!
先生は眼鏡の位置を整えながら、呆れた顔で私達を見る。
「もっと早く出なさい、先生みたいに」
「うぇぇ……そんな早く起きれませんよ。疲れた……」
「疲れたじゃないだろー。休んでないで二人とも教室行きなさい」
「はぁーい」
私はだるそうに返事をし、静かな廊下を歩いた。
中条はスタスタと早足で歩いていき、教室の前でバッグを置いて壁に寄り掛かる。
私もバッグを投げ捨てるように廊下に置き、中条の横に立った。
二組のルールでは、遅刻したものは廊下に立っていなきゃいけない……というルールがある。
転校したてで初めて遅刻して来たとき、何も知らずに教室に入ったら福野に『まだ入ってくんな』って追い返されたっけ。
それ以来、朝の会が終わるまでちゃんと廊下に立つことにしている。
あの時は、本当に恥ずかしかった。
皆して私の方を見るし、福野も鬼のような形相で私の体をドアの外へ押し付けるもんだから……全く。
今思い出すと、なんだか少し腹が立ってきた。
「…………」
でも、この静かな空間で数分間の間、中条と二人で立つなんて……。
うん、なんか時が過ぎるのが遅く感じる。
廊下で待つのって、こんなに時間遅かったっけ——……?
「……」
沈黙が嫌で、中条に話しかけようと横を向く。
しかし、中条から『話しかけるな』オーラが出ていたので、私は黙って朝の会が終わるのを待つことにした。
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「依麻おっはよー!」
朝の会が終わり、由良が勢いよくドアを開けた。
私はバッグとおばさんからもらった傘を持ち、教室に入る。
「おはよー……っ!?」
挨拶を返すと同時に、由良が私の肩を掴んだ。
ちょ、私濡れてるからあまり触らない方が……。
そう思っていると、由良が笑みを浮かべてこういった。
「——壱、髪切ったよ」
「!? ……え、あ……そ、そうなんだー」
声でかいよ、由良さん。
朝から聞くその名前に、私は軽く動揺しながら自分の席に座ろうとした。
しかし、その動きを由良に封じられる。
「……え、由
「なんかねぇ、短く切り過ぎ!! 変!!!!」
「ちょ、」
声でけぇぇぇぇって!!
しかもそんなハッキリと……!!
私は目を見開きながら、ぎこちない動きで今度こそ自分の席に座った。
今の由良の発言、絶対壱に聞こえたよね。
教室は狭いし、由良の声のでかさは天下一品だし……。
——そのせいか一時間目の授業で、壱はずっと髪型を気にしていた……気がした。