コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: *叶恋華*Ⅱ β実話β ( No.55 )
- 日時: 2011/07/29 01:38
- 名前: 絵磨 ◆VRtMSlYWsU (ID: 5p/ciDZ4)
- 参照: こんな人生寂しいです(by.BadBye
第十五話『大好きな気持ち』
君の、笑顔の理由になりたい。
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「——壱、髪切って幼くなったね〜」
放課後。
いつものように掃除をしていた私は、自分のポジションでもある黒板の前でそんな言葉を聞いた。
振り返ってみれば、犬ちゃんや男子多数が壱の方を見ながらそう笑っている。
壱はジャージ姿で机を運びながら、軽い笑みを浮かべた。
「この髪型、変だからさ……」
壱はそう言いながら、自身の髪の毛を触った。
や、やっぱ気にしてたんだ……。
なんだか少しだけ、胸が痛くなった。
「そんな事ないよー! 俺、今の壱の髪型の方が好き」
「俺も俺も!」
「昨日は何かクールっつーか、大人っぽいっつーか……。とにかく長かったもんなー」
犬ちゃんや男子多数は、顔を見合わせながらそう呟いた。
壱は「そう?」と笑みを浮かべた後、また机を運び出す。
……壱、また掃除手伝ってくれてるんだ——……。
私の班が掃除当番になってから、壱は毎日手伝ってくれている。
「——依麻、ゴミ捨てて来て〜」
「うん、わかった」
乙葉に言われ、私はゴミ箱の方へと向かった。
黒板消しを一旦置いて、ゴミ箱を持って廊下へ向かう。
そんな時、壱の友達の姿が目に入った。
「……」
あの人、壱を待ってるのかな——?
壱は別に掃除当番じゃないし、友達を待たせてるなら、手伝わないで行けばいいのに——……。
どうして、手伝ってくれてるのかな——?
壱は、優しいよね。
ゴミ箱を握る力を強め、私は玄関へと向かった。
**
「ふぅ……」
掃除が終わり、スカート払いながら廊下を歩く。
制服登校の時に掃除だと、スカートが汚れるんだよね……。
そう思いながらふと前を見ると、壱とさっきの友達が前から歩いてきた。
壱はいつも、人の左側を歩く……気がする。
いつも私が見かけるとき、必ず左側を歩いている。
まぁ、今の私から見たら右側に居るけれど。
「……っ」
距離が近づき、前に居た壱と友達が素早く横にずれ、私と壱はすれ違った。
顔が見れなくて、俯く私。
壱とすれ違う時は、時間が止まったように思える。
胸が、つまるような——。
そんな気持ちに、なる。
「…………」
好き。
そんな気持ちが、日に日に大きくなっていく。