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Re: *叶恋華*Ⅱ β実話β ( No.67 )
日時: 2011/07/31 17:44
名前: 絵磨 ◆VRtMSlYWsU (ID: YNzVsDBw)
参照: http://www.youtube.com/watch?v

第十九話『十五歳』


一時間目は、家庭科だった。
朝の家庭科は、楽しい授業だとテンションが上がる。
先生が来るまで皆騒いでいて、教室は騒がしくなっていた。


「——零、誕生日おめでと〜」


志保ちゃんがそう言い、私の席付近は少しざわめく。
周りの人々は、次々に零に「おめでとう」と言う。
そこで龍が、目を丸くして零を見た。


「零も誕生日なの?」


その発言で、辺りは静まった。
龍の斜め前の席の志保ちゃんも、驚いた顔で龍を見る。
零も大きな目を更に大きくし、龍を見た。


「も……って?」
「他に誰かいるの?」
「え、だって水城も——」


龍のその発言で、私は軽く飛び跳ねた。
さっきの朝の三人の『誕生日おめでとう』のやつ、聞こえてたのね。
……ってことは、壱も聞こえてたと言うことじゃ……。


「依麻おめでとー」
「あ、ありがとう!」


志保ちゃんが片手を上げてそう言ってくれた。
私も慌てながらお礼を言うと、零は目玉が飛び出るんじゃないかって位まで目を見開く。
だ、大丈夫か、目玉落っこちそうだけど……。


「え、水城さんも今日誕生日なの?」
「え、あ、うん……」


まさかの零と同じ誕生日とは。
私も目を見開き、零も目を見開く。
お互い目を見開きながら固まっていると、


「うっわーっ!! 零と水城デキてるべー」


出 た よ 意 味 わ か ら ん 集 団
零と仲のいい不良グループの男子が、大きな声で叫んだ。
クラスが一気に静まり、私と零に注目が浴びた。


「誕生日が記念日かー!」


誕生日が記念日って、何だそれ!!
注目を浴びているという恥ずかしさで、微かに顔が熱くなる。
気を紛らわそうと辺りを見渡すと、ちょうど壱と目が合いかけた。
……って、こっち向いてたんだ!?
い、今の聞かれてた?


「デキてないデキてない、デマ流すなって!」


零がそう否定し、不良たちは笑いだす。
私は意味わからない状況に慌てながらも、笑ってごまかした。
笑ってごまかす、私の悪い癖。
悪い癖だけど、癖っていうのはなかなか治らないんだ!!


開き直るのと同時に、先生が来て授業が始まった。


**


「愛奈ー」


授業が終わり、愛奈の席に行く。
それと同時に、何故か龍がチラ見してきた。
え、なんだ。
疑問に思いながらも愛奈と話していたら、壱も龍も視界に入った。


「……」


壱は伸びてこっちを見ている。
まるで、覗き込むような感じで——。


「……っ」


きっと龍を見ているんだろうけど、ドキドキするぜ畜生!!
心の中でそう叫びながら、壱から視線をずらす。
すると愛奈が、時計を見て呟いた。


「今日四時間だからさぁ、依麻」
「ん?」
「帰り、渡したいものあるんだけどいい?」
「渡したいもの? うん、いいよ」


渡したいものとは、何だろう。
さっき手紙もらってはずなので、手紙ではないだろうけど——。
そう思っていると、龍が再び私の方をチラチラ見てきた。


「……壱、——」
「壱ー」


いつの間にか壱の所に居た犬ちゃんと健吾も、笑みを浮かべていた。
壱も頭を触りながら俯いたり、笑顔浮かべてる。
な、なんだ……?


「……っ」


壱もこっちを見たので、見ないふりして愛奈を見つめた。
——でも、視野ってものは憎いやつで……。
愛奈を見ても、壱も龍も視界に入るのです。


「や、——」
「どうすんのよ——」
「——」


壱と龍、何か話してるし……。
色々気になるけど——。
とりあえず、


「チャイム鳴るから座るね。ばいばいっ」


気付かないふりが一番だ。


「ん、ばいばーい」


私は笑みを浮かべ、愛奈の席から離れた。
愛奈も手を振り返し、私は自分の席へと向かった。



なんだか今日で十五歳っていう実感が、全く湧かないのだが。
頭の中は、まだ十五歳になりきっていない……気がする。


うん、私はまだまだ子供だ。